Sweet Lil' Devil U



「ロス・・・いや、ニューヨーク・・・・んー・・・・趣向を変えて北欧とかイギリスとか・・・・パリに買い物にでも行く?」
「何・・・・・?」
「何、じゃないよ。」
「なんで・・・・「デートしよう」で・・・・そうなる訳?」
「どうせするなら、誰も知らないトコがいいかと思って。」

彼女は驚いたのか、マグカップを宙に浮かせたまま。

「普通の・・・近くでいいのっ。そこら辺のカップルがするようなデートがしたいの〜〜〜〜!!」

彼女がそう言うのには、訳がある。今まで二人で出かけると言えば、いつも一週間ほど休暇を取って、海外に出てしまうから。公認とはいえ、空港の入り口でのマスコミ待ちに、嫌気も差すのだろう。

ましてやいつも行きつけのお店ぐらいしか二人で出かけることなど無いし、流行のスポットへはさすがに行けない。

「じゃあどこへいく?」
「蓮と一緒にCM撮影したトコ!!行こう?」

そう言った彼女は目をキラキラさせて、「懐かしい〜〜〜〜!!」と、もうオレの、イエス・ノーなど関係なく、一人盛り上がっていた。

「懐かしいね。君の・・・オレを見事に翻弄したCM・・・だったっけ。」
「翻弄されてた?本当に?あの時ね、私・・・蓮とキスしたかったの・・・。」
「へぇ・・・?あの頃にはもう、オレを好きでいたんだ。それは初耳。あれ、本気の演技だった?」
「あっ・・・・・。」

あのCMの事はどうも「恥ずかしい」らしく、今まで一切口にしなかった。
演技ではない、オレへの本気が入っていたなら、なお更。
負けず嫌いな彼女らしい、「ひみつ」だったのだろう。

「デート、しようか・・・・。」

笑ってそう告げると、「誘導尋問だわっ。」と口を尖らせ、「嵌められた」と真っ赤になって口にした。





******



久々にあの細い階段を降りて、薄暗いカウンターの前に腰をかけた。
事前に連絡を入れたせいか、マスターの計らいで今日のお客は顔なじみだけにしてくれたと言った。マスターは相変らずの彼で、オレ達のことをよく覚えていたようだった。あの時のように「いつものにしますか?」と言って、薄めはしなかったものの、オレにはウーロン茶を出してきた。車で来たから飲めないことを配慮してくれたのだろう。

「ポッキー…買ってくればよかったな。」

彼女がそう呟くと、マスターは「ありますよ?」と口にした。

「えぇぇぇ???本当ですか?」
「あのCM、年間トップを取られたじゃないですか。おかげでマスコミにウチのお店が取上げられまして。ポッキーをマドラーにしたいってカップルのお客さんが増えたんですよ。敦賀さんと京子さんのファンの方もいらっしゃいますから。ホラ、あそこに撮影時のお二人の仲がいいお写真とサインが飾ってあるせいで、今でもファンの方がよくいらっしゃいますよ。なんと言っても、お二人にとって記念のCM、でしょう?」

懐かしそうにマスターがすぐ右横の壁を指をさすと、壁の写真を見た彼女は、顔を赤らめた。オレと彼女の、最後のシーン。ごく間近で微笑んでいる画をそのまま写真に引き伸ばしたもの。

今日彼女に出されたのは、もうただのジンジャーエールではなくジンが入っていた。中に入っていたポッキーをつまんで遊ぶ。一口食べて、「これで蓮に差し出したのよね」と笑った。

「演じていたときの事、覚えていたんだ?覚えてないって言ってなかった?」

更に赤くなって、また蓮の誘導尋問だわ、と言っていた。


ただあの時と違うのは、ぴたりと無理に身体をくっつけて寄り添わないまでも、その距離は自然で心の距離は重なるぐらいに近いこと。一緒にいる事に慣れても、やはりあの頃のようにすぐに照れること。そうやって彼女は素でオレを翻弄する小悪魔だと言うこと・・・。目が離せなくて、可愛くて・・・・オレは小悪魔に堕ちっぱなし。もう一緒に飲みに来る事など無いと思ったあの頃に比べたら、幸せ・・・だろう。


「蓮・・・連れてきてくれてありがと。」


来ただけで素直に喜ぶ彼女を見て、オレも嬉しかった。
デートも・・・たまにはこういうところもいいのかもしれないと思う。

「あの時、オレはもう君とこのお店に一緒に来る事も無いだろうなと思ったんだけどね。」
「蓮もあの時には私の事、好きだったの?あの演技、本気だった?」
「・・・・・・誘導尋問だね。やられた。」

「ふふっ。蓮・・・また連れてきてね?」
「それも、いいね・・・。」

あの時の最後の台詞で返事をすると、分かったのか、くすくす笑った子悪魔な彼女は、ご機嫌にポッキーを最後まで食べていた。


「ねぇ、食べて、みない?」


そう耳元で囁いたら、「その台詞は私の!!!」と・・・照れを隠すように頬を膨らませた。


帰ったら・・・・次はどうやって彼女を誘導尋問して、隠した気持ちを見せてもらおうかと、目の前のグラスのウーロン茶をくるり、と回した。



マスターはオレたちの様子に、穏やかに微笑んでいるだけだった。





























2006.3.29


デート文第二段。リクを頂きましてすぐ浮かんだのが冒頭。こちらも短いですが久住さまに捧げます(半ば強制的?貰っていただけて良かったです。(^^;))。また他のがきっちりできたらお送りしますね。


今後ともどうぞよろしくお願いします。