魔法の国のきょこさん@Guess How Much I Love you.




――無事に森の中から帰ってきたキョーコさんは、いそいそと夕飯の支度をしました。蓮様はいつものソファーにそっと寝かされて、「お休みしててください」と言われて言われたとおりじっとしてキョーコさんを見ていました。まるで本当にキョーコさんのお人形のようです。しばらくして蓮様は、自分の小さな手をじっと見つめました。



「キョーコちゃん。」
「何でしょう。」
「まだ、思い出さないの?」
「んと・・・はい。」


――キョーコさんがかけた師匠である蓮さまへの「小さくなる魔法」。それを解く魔法をキョーコさんが思い出せなければ、蓮様は元に戻れません。蓮様は答えを知っていましたが、あえてキョーコさん自身に思い出して欲しかったのです。


「あ、あの、今日・・・敦賀さんのお誕生日なので、ケーキを作ったんです。ろうそく、何本立てますか?三本?」

見た目三歳の蓮様に、真剣にキョーコさんは聞きました。
蓮様は「ぷい。」とキョーコさんから顔を逸らして、答えました。



「・・・|||。26本で。」
「そっ、そんなに無いです〜〜〜〜っ(T△T)。」
「分かった、分かった。いいよ、三本で。」
「えへ。」



結局キョーコさんの懇願には敵わず、蓮様は三本のロウソクの火を吹き消しました。キョーコさんは嬉しそうに、「お誕生日おめでとう」と言いました。小さな姿では全く様にならず、照れて「ありがと。」と目を逸らしながら蓮様は答えました。



「敦賀さん、ケーキ、食べさせてあげましょうか?」



きらきらきら・・・・☆と何やら目を輝かせ始めたキョーコさん。蓮様でおままごとがしたくなったようです。断ったら、きっと、キョーコさんがたいへんしょんぼりするのは目に見えておりましたから、蓮様は半分諦めて、いいよ、と言いました。



「・・・・・(何故誕生日に…かっこ悪い…|||)・・・・。」
「はい、あーん☆」



キョーコさんはいつもより素直な蓮様と、理想のお人形ごっこができて、にっこにこです。突いたらいけないと、フォークではなくスプーンで小さな蓮様用にちょっとずつ取り分けて食べさせてあげました。口の端に付いたクリームを指で取ってぺろり、と舐めて、「どうですか?美味しいですか?」とこれまた心配そうに可愛く聞くので、蓮様はうっかり、「うん。」と素直に答えてしまいました。



「ホントですか〜〜〜☆」



更に目を輝かせたキョーコさんは、最後まで、しっかりケーキを食べさせてあげました。




――食べ終えて、二人はソファで一休み。蓮様はこんな日でもむずかしーい魔法の本を欠かさず読んでいます。ただし、キョーコさんの膝の上で、キョーコさんにとても厚い本を支えてもらいながら、です。キョーコさんは蓮様が読む本を読みながら半分うたた寝を始めました。ぐらぐらと揺れる本に、蓮様はキョーコさんの指を握って起こしました。



「キョーコちゃん?」
「あっ・・・寝てました。」
「もう、おやすみする?」
「うーんと、もう少しで魔法思い出せそうなんですけど・・・。」



ひとさし指を額に当てて、うーんとうなったキョーコさんは、「そうだ☆」と、手を叩いて、「お風呂、入れてあげましょうか?」と言いました。



「え・・・・?い、いや、それだけは、自分で入るからっ・・・(というか元に戻してくれる魔法を考えていたんじゃないのか・・・?)。」


と、蓮様は珍しくうろたえました。



「え〜〜〜〜。足滑らせたり湯船に入れなかったり、溺れたりしたらどうするんですか??小さな桶にお湯張ってあげようと思ったのに〜〜〜〜。黄色いアヒルもあるんですよ?」



完全におままごとの世界を楽しんでいるキョーコさんに、今は元に戻す気が無い事を蓮様はようやく気づきました。



「いいっ・・・、いいから。本当に。シャワーで済ますから。」
「えぇぇ〜〜〜なんでですかっ!!!」
「い、いや・・・あのね・・・。」
「・・・・じゃあそれは敦賀さんに譲るとして・・・・寝る前に、絵本を読んであげるのは譲りませんっ。『Guess How Much I Love You』という本を誕生日のプレゼントに買って来たんです。だから読んであげますね?あの、大好きですよ?敦賀さん。」

「うん・・・・(あぁぁぁ〜〜〜もういつも不意打ちなんだから・・・この子は・・・・)。」


三歳児の姿では、何をしようとしても様にならず、とりあえず、ちゅっ、とキョーコさんの顔を引き寄せて、ちゅうをして、とてとて歩いてシャワーを浴びに行きました。シャワールームの扉が開けられなくて、キョーコさんに開けて貰いました。自分が住む世界はなんて背が高く出来ているんだろうと、蓮様は思いました。



鏡に映る自分は、ぽてっと丸い顔と身体。小さな手、細い腕。しみじみ自分を観察してしまいます。

「敦賀さ〜〜〜ん、もしかしてシャワーも出せませんか?やっぱり、入れてあげましょうか?」
「い、いやっ、平気だから。」
「そうですか〜?」



心配そうに傍にいるらしいキョーコさんの声に、蓮様はさっさとシャワーを浴びて、大き過ぎるバスタオルを何とか羽織って外に出ました。


「よく出来ました☆」そう言って蓮様の髪の毛をわしゃわしゃわしゃ、と拭いてタオルドライして、ドライヤーで乾かしてくれるキョーコさんの手に、蓮様は大人しくしていました。なぜなら、キョーコさんがいつか本当のママになった日の様子がふと目に浮かんでしまったからです。とても、しあわせな気持ちがしました。


「・・・ウチに子供用の小さなパジャマも下着も無いんです。バスローブに包まって寝てください。」
「いいよ、なんでも。」
「ぎゅってして寝てあげますから♪大丈夫♪」
「はは・・・ありがとう。」



蓮様は、再びキョーコさんにぎゅっと抱えられると、小さな蓮様には大きすぎるほど大きいベッドの上に横にしてくれました。そして、またあの分厚い魔法の本を持ってきて、「読んで待っていてくださいね」と言って、キョーコさんもシャワーを浴びて寝る準備をしました。


「さあ、本を読んであげますね?」

そういって、真ピンクのハートの表紙の本を手にしたキョーコさんが部屋に入ってきました。別の国の言葉で、ちいさなウサギが大きなウサギに「どれだけ君の事が好きなのか教えてあげる」、「コレぐらい好き」と様々な手段で繰り返しています。どうして今日キョーコさんが蓮様に「コレぐらい好き」と魔法をかけてまで言ってくれたのか、分かりました。あれも、普段あまり蓮様には照れて「すき」と言わないキョーコさんなりの、やさしい誕生日プレゼントだったのです。


読み終わった後、キョーコさんは蓮様に、もう一度、「敦賀さんが大好きですよ?」と、蓮様の唇にやさしくキスをしました。キョーコさんは大変照れて蓮さまの小さな身体に額をくっつけました。


蓮様の小さな手がキョーコさんの顔を支えて、蓮様がキョーコさんの唇にお返しのキスをして、「誕生日プレゼントありがとう。」と言いました。



「えへへ・・・☆」



嬉しそうにキョーコさんは小さな蓮様をぎゅ〜っと抱えて、今日の眠りに付きました。しばらくしてすやすや眠る姿を見て、蓮様も一安心です。キョーコさんの腕の中から抜け出して、しばらく魔法の本を読んでいました。



――ぽんっ・・・・☆



そして12時を回って日が変った頃、蓮様は元の大きさに戻りました。



「キョーコちゃんらしい魔法だね・・・・。」


シンデレラ魔法をかけてくれた自分の腕の中の小さな眠り姫の額に、蓮様はもう一度キスをしました。


「誕生日プレゼントありがとう。」


蓮様は貰った本を読み返して、蓮様もとても穏やかな気持ちで、今日の眠りに付きました。





そして次の日元の大きさに戻った蓮様にがっかりしたキョーコさんを抱きしめてこう言いました。




「小さくなって君に抱きしめてもらうのもとても幸せだったけれどね、君を抱きしめてあげられるのも、オレしかいないんだよ?」










2007.02.10    

Happy Birth Day Dear Ren☆記念SSとして。