魔法の国のキョーコさん@花のワルツ 3.5


「どうして、私に良くして下さるのですか?」
「キョーコ様と踊ってみたかったのですよ。社交界に生きる者の、一時の楽しみ、でしょうか。」
「・・・・・?(どんな楽しみなんでしょうか?)」


顔に、『????』を浮かべているキョーコさんに向かって、彼は、くすくすくす、と優しく笑いました。


「…蓮様が姫を社交界には出したくないお気持ちはよく分かる…。こんなに社交界の姫たち特有のモノが無いのではね。貴女様はきっと、蓮様の元へはいつまで経っても返していただけないでしょう。」
「?????。」
「わたくしの事は知っていらっしゃると思って申し遅れましたが…レオと申します。蓮様の旧友です。」
「レオ様は敦賀さんのお友達っ☆・・・じゃない・・・れ、蓮のお友達、なのですね?」
「いいですよ、いつもの通りで・・・・くすくす・・・・。」



楽しそうに笑うレオさんは、どこから持ってきたのか、「初めて姫にお目にかかれた記念と、わたくしからのクリスマスプレゼントです。」そう言って、彼が渡したのは、腕に抱え切れないほどの大きな薔薇の花束と、立派な小箱でした。その立派な小箱を開けてみると、中には綺麗な形の整った小さなかぼちゃが入っていました。


「か、可愛いかぼちゃです!!お部屋に飾りますねっ。」
「普段は飾って頂いても構わないですが・・・・。つかぬ事を伺いますが・・・・キョーコ姫は、お小さいときに・・・かぼちゃの馬車に乗りたいと、言った事はございませんでしたか?」
「・・・・な、なぜ私がかぼちゃの馬車に乗りたかったことを知っていらっしゃるんですか?」
「蓮様から随分と昔、わたしや蓮様がまだ12歳程で、魔法使い見習いに入りたてだった頃、蓮様から話を聞いたことがあるからです。小さなキョーコ姫は、蓮様が預かっていた王家のお守りを渡した大事な魔法使いで妖精と話せる女の子なのだと言っていました。そして、魔法で大きくしたかぼちゃの馬車に乗ってみたいと目を輝かせて言っていた、と。学んでいたら、いつかそんな魔法をかけられるようになるだろうか?と…言っていたのですよ…くすくす…。今日お会いできると知って、それを思い出したのです。」
「・・・・・。」

うるうるうる、と目を潤ませて、キョーコさんはレオさんを見つめます。

「私がかけてもいいですが・・・今の蓮様なら姫の為に、このかぼちゃを馬車に変えてくれるでしょう。もし出来なかったとしても、私を怨まないで下さいね。」



軽くウインクをしたレオさんに、キョーコさんは嬉しくて落ちそうになる涙目を隠すようにして、俯きながら言いました。


「・・・そのお気持ちだけで、とても嬉しいです・・・・。」



キョーコさんは、宝石が沢山飾られたきらびやかな箱に入った小さなかぼちゃを、まるで大きな宝石が入っているかのようにうっとりと眺めました。

今キョーコさんの頭の中では、優雅なワルツの音楽が流れる中、目の前のきらびやかな風景は消え、かぼちゃの馬車に乗り、まるで自分が大好きなシンデレラになったような風景が流れています。



「小さなかぼちゃ一つでそんな素敵な反応をして下さるから、蓮様もキョーコ様を手元から少しもお離しにならないのでしょうね。思わず・・・・いや・・・・・・なんでもありません・・・くすくす・・・・。」


にこり、とレオ様が微笑みかけると、キョーコさんは、思い出したように蓮様の姿を探し出そうと、きょろきょろ、と視線を彷徨わせました。いつもはキョーコさんシンデレラの為だけの王子様は、今は、皆の為の王子様になっていています。二人が周りを見まわしたその隙に、会話が終わったのだと見越したほかの姫がやってきて、


「レオ様、私と踊っていただけませんか?」


横からレオ様が声を掛けられて、そうですね、と言って声を掛けられた相手の手をとりました。



「では、キョーコ様また後ほど・・・・。」
「はい、素敵なプレゼントをありがとうございました☆」



にこり、と笑って挨拶をしました。
しかし、また、一人になってしまいました。
その様子に、他の王子たちが次々と声を掛けてくれますが、キョーコさんは全て断ってしまうのでした。



しかも蓮様は相変わらず戻っては来られない様子です。キョーコさんを目の端で追い、気に掛けながらも、あくまで社交界も国の大切な外交の仕事の一つ、一度表舞台に出てしまっては、陰に戻るわけに行きませんでした。



そして、ついにキョーコさんの目の前にやってきたのは、この国の王子、レイノさんでした。蓮様もそれを目の端に捉えた瞬間、内心、もう戻りたくて仕方がありません。姫の話を半分上の空で聞き流し、細心の注意を払ってはいたつもりでした。


「キョーコ・・・。」
「はい・・・・。なぜ、レイノ様はそんなに親しくわたくしをお呼び下さるのですか?」
「お前は忘れているんだな・・・。」
「忘れている?何をでしょう。」
「いや。」
「お前・・・ヒツジを見たいのだったな。もう、踊るのも飽きただろう?私が案内しよう。」
「ヒ、ヒツジっ☆み、見たい・・・・ですっ・・・・けど・・・・でも・・・・蓮の傍を離れるわけには・・・・。」


一瞬目を輝かせて喜んだものの、蓮様を置いて自分だけ他の殿方と他の場所に行ってしまう事は、いけない事のような気がしました。しかも、どうしてレイノさんが、キョーコさんがヒツジを見たがっている事を知っているのか、シャンパンでほんの少しほろ酔い加減のキョーコさんは気付きませんでした。


「そう警戒するな。とって食おうという訳ではない(・・・・・多分)。幸せ鳥を貰った礼だ。好きなだけ眺めて帰るがいい。くれてやりたいが、アレもまた他の国からの貢物でな・・・。」

「ヒツジさん、いりません、いりませんっ。見てみたいだけなんです。あの・・・そういえば・・・幸せ鳥の飼い方を知っていますか?とにかく可愛がってあげればいいんです。水も餌も普通の鳥と同じですから☆。一番いけないのは、ツガイになった後の幸せ鳥の小屋を別々にしたり、引き離したりする事です。一週間もしないうちに互いに弱りきって死んでしまいますから。絶対に一緒にしてあげてくださいね???卵は、育てる分だけおなかの下におきます。人間に分けてくれる分は、おのずと鳥が別に分けて、近づくと、首で合図をくれます。そうしたら、拾ってください。勝手に卵を取り上げると、また、自分の子供を取り上げられたような気がして、親の幸せ鳥も弱ってしまいますから。とっても頭のいい、可愛い子なんです、ヘンゼルとグレーテル☆。沢山子供が生まれて、沢山育ったら、いつか、ヘンゼルとグレーテルの子供下さいね?ウチで育った幸せ鳥もあげますから。」


「分かった。大事に育てよう。」


ふっと笑ったレイノさんは、キョーコさんの手をとって、手の甲にまた口付けて、言いました。

「姫、本当にもう踊らないのならヒツジまで案内しよう。もし、踊るのであれば、このまま中央へ。」
「(・・・・くらくらくら・・・・///)お、踊りはっ・・・。」


どちらの選択も、正しくないような気がして、固まってしまいます。しかも結婚している以上蓮様とだけ踊れればそれで良かったので、キョーコさんは、仕方なく残された選択肢、ヒツジを見に行く事を選ぶ事にしました。



************




――彼女の姿が無いな・・・・・?



蓮様は、きょろきょろきょろ、と辺りを見回します。
さすがに心配になった蓮様は、先ほどまで話していたレオさんを探して声をかけました。


「レオ、彼女はどこだ?」
「うん?さっきまでそこにいたはずだが・・・・。」
「この国の王子の姿も見えないな・・・・・。」
「姫は心許なさそうで、少し寂しそうだったぞ。早く探してやれ。クリスマスに泣かせるなよ。」
「・・・・・・・・。」



そう言われて蓮様は尚更心配になります。
しかし、誰かに探して貰おうにも倖一さんは、双子の兄妹の傍に着いていて、鳥の姿になって探して貰う事は出来なかったのです。















つづく☆



2007.05.02

レオさん@友情出演の回いつもよりちょっと紳士風。