魔法の国のキョーコさん@花のワルツ 3





蓮様は、「木こりの妖精」との約束どおり、広間に入ると、少しだけ魔法で大きくしておいた大きな籠いっぱいの妖精の木の実を、広間の右端に置きました。

広間では、既に、かなりの数の妖精が、ふわふわと空を飛び、遊んでいました。

『あ、蓮さまとキョーコちゃんだ!』
『『『『『『『『蓮様、キョーコちゃん、メリークリスマス!!!!!!!』』』』』』』』


頭上から声を掛けられ、見上げるといつも妖精の森にいる妖精さんがいました。蓮様とキョーコさんは、誰もが「ん?」と目を疑う方へ手を振ります。

蓮様が置いた木の実の周りには、気付くとどんどんと数が増えていき、木こりの妖精が周りにふれ回っておいた、「夜はご馳走を食べに来い」、は国を越えて広まった様子です。

既に妖精たちの宴会が始まった様子で、沢山の妖精たちが、妖精の祝福の酒を持って集まり、赤くなって笑っています。


「なんだキョーコ、妖精でもいるのか。」
「はい、沢山いますよっ。今日は妖精さんたちにとっても、一年の感謝の日ですからっ☆もう、お酒に酔って真っ赤になって、楽しそうです。」
「そうなのか。にぎやかなのは、いいぞ!どこにいるかは分からないが、妖精たちよ、お前達も共に大いに楽しむのだ。」

先ほど蓮様が手を振った方向に向かって、王様は楽しそうに笑って語りかけます。


『『『『『『『『王様も、良いクリスマスを!!!』』』』』』』


それを聞いた蓮様は、にこり、と沢山の妖精たちに向かって笑いかけて、王に伝えました。

「父王も「良いクリスマスを」と言ってますよ。」
「そうか。言葉が何でも通じるんだな。オレももっと妖精達と話がしたいぞ。キョーコよ、ヒツジは探しておくから、今度、彼らとの話し方を教えるのだ。」
「はいっ☆でも彼らは、どうしても伝えたい事があれば自ら姿を見せる事もありますし、魔法をかけてあげれば見えるようになります。」
「お前や蓮はそんな事をしなくても見ているだろう。」
「そうですね。今度妖精さんにどうやったら誰もが見えるようになるのか聞いてみます。」


魔法の国の王家の会話は不思議で、キョーコさんの国を任された人間達は、キョーコさんや王様達を席まで案内したのち、裏で、「妖精が見えるのだと仰っていたぞ。きっと魔法の国というぐらいだから、まるでレイノ様のような方が沢山いらっしゃる国なのだな」と、噂話をしました。


そのレイノさんとすぐ歳の近い妹姫、レイノさんの数人の姉、兄達が席について最後に王と王妃が入り、周りを見渡せば沢山の国々の王と王妃と、姫、皇子、王子。高々と掲げられた杯達に、一気に大広間の中はにぎやかになります。大広間では途切れることなくオーケストラが美しい音色を奏でて、各国の姫や皇子がダンスパーティを楽しみます。

魔法の国の王は酒と料理があれば満足であるので、食べては自分の最愛の王妃を連れて踊り、踊ってはまた食べて、底なしの体力です。王妃が一休みする間は各国の王と親交を深め、その一方で話しながら美味しそうに食べ続け、目の前の皿が綺麗に無くなります。


「あの国の王の身体の中には、新たな世界が広がっているのだ。」

と、半ば伝説となりつつあった光景を目の当たりにした各国の王が、彼に、本物が見られたと言って、握手を求め、賛辞を送ります。

「コレは美味いぞ。コレは何というものなのだ?王よ。」
「それはわが国特産の、牛、というもの。それならぜひお取引願いたい。普段からも王の胃に入れて頂きたいですな。」
「そうか。いいだろう。美味いものを食べれば、皆幸せになれる。取引しようじゃないか!細かい事は私の息子、椿が担当しよう。そういえばヒツジ、はいないのか。」
「ヒツジなら、あの王の国に。あとであの王をご紹介いたしましょう。」
「それは助かるぞ!牛とやらとヒツジ両方わが国へ。」


外交担当の長兄である椿さんは秘書の蘭さんを連れ、パーティどころではなく、コレは便利、とばかりに、多々の取引の段取りと挨拶回りをしています。父王はその椿王子を呼び、交渉に入ります。


一方で末の双子の兄妹の楓さんと葵さんは、大きなクリスマスツリーの下の席で、倖一さんとお行儀良くお食事を楽しんでいました。二人はおなかがいっぱいになって、普段なら眠る時間になってくると、用意された控え室に戻り、倖一さんが用意した着替えに着替え直すと、共に、既に夢の中です。


そして蓮様は、久しぶりのパーティ出席、各国の姫が、ダンスの申し込みに群がっていました。キョーコさんは、蓮様の傍におりましたが、周りの姫たちの力強さに目をチカチカさせています。最初は断っていた蓮様ですが、パーティ主催のレイノさんの妹姫に申し込まれると、さすがに断りきれなくなって、踊らざるをえなくなりました。


「蓮様、お久しゅうございます。」
「久しぶりですね、姫。」
「ご結婚おめでとうございます、蓮様、キョーコ様。キョーコ様にお初にお目にかかれて大変光栄ですわ。」


妹姫がキョーコさんに、にこり、と笑いかけます。条件反射のように、にこり、と笑い返し、「初めまして、キョーコです。」と言いました。そして、蓮様が連れられ踊りに行ってしまうと、する事もなく、目の前のシャンパンを飲んで過ごしてみます。華麗なダンスを披露する蓮様と姫の二人に、周りから感嘆の声があがります。父王も、久しぶりの蓮様の姿に、うんうん、と嬉しそうに頷きました。


キョーコさんも、蓮様の姿を目で追っていると、目の前に、蓮様と同じくらい背の、一人の王子が立っていました。


「姫、わたくしと踊りませんか?」


そう言って何人もの王子がキョーコさんに申し込みましたが、キョーコさんは、「わ、私っ・・・踊るのがとても苦手で・・・・」と言って、全て断ってしまいます。


「キョーコ姫は殆どお見かけしないのに、今日はいらっしゃると伺って、共に踊れるのを楽しみにしてきたんです。」
「い、いえっ・・・あの、わ、私はこういう所には不慣れで不似合いなんですっ。」
「何を仰いますか。とてもお似合いです。」
「・・・・・・・?」
「蓮様がご結婚なされてからパーティにいらっしゃらないのは、キョーコ様がいらっしゃるからだという噂は、本当のようですね。社交界に出たくない、いや、出したくない、のは当然でありましょう。」
「はぁ?(どういう意味でしょう?)」
「くすくす・・・。では、踊らず会話を楽しむ事にしましょう。蓮様もついに、踊らざるを得なくなって、キョーコ様もお暇でしょう?」
「そ、そうですけど・・・・。」


生まれてこの方、あまり多くの殿方と会話をした事がないキョーコさんは、なぜ、今初めて会ったこの王子が、親しく話しかけてくれるのか、良く分かりませんでした。


目に映るのは、ようやく踊り終わった蓮様の周りに次々に出来ていく綺麗に着飾った、それはそれは美しい姫の山で、毎日傍にいるのに、少しだけ話しがしたいが為にわざわざその中を割って入ることをしてはいけないのだと、キョーコさんは本能的にそう思いました。なんとなく、ちくり、と胸が痛んだ気がして、少しだけさびしい気持ちになりました。そして、なんて嫌な気持ちなんだと首を振り、これはきっと蓮様が「単なる嫉妬」と言ったのと同じような気持ちで、美しい姫たちに不安になって嫉妬しているのだ、と思いました。


「蓮様は、社交界きっての姫たちの憧れの的でいらしたから、キョーコ様とご結婚なされたという話が伝わった時には、それはもう、誰もお会いした事がないキョーコ様がどんな方なのかといった話で持ちきりでしたよ。」
「・・・・・。」
「この中にいらっしゃる姫たちのどたなでもない、キョーコ様を選ばれたと聞いて、蓮様らしいとは思いましたけれどね。」
「・・・・・・?」
「誰にでも、とても優しく平等に大事に扱っていらしたから、蓮様がどなたをお慕いしていらっしゃるのかは、誰にも分からなかった。こんなお綺麗な姫を一人手元に隠していらしたとは、蓮様も罪な方だ。他の沢山の姫が、きっと今、心の中で嫉妬をしていますよ。私は蓮様に嫉妬をしたぐらいだ。」
「嫉妬・・・・ですか?何のでしょうか?」
「いえ、お聞き流しください。・・・・蓮様がとてもとてもキョーコ様を大事になさっているというのもまた、社交界では皆が知るところですから・・・・だからそんなに、蓮様が傍にいらっしゃらなくて、不安そうな顔をしなくても、大丈夫ですよ、くすくす。」
「・・・・・///。」



社交界に全く馴染みの無いキョーコさんは、彼がしてくれる話を、ただ黙って聞いていました。










2007.04.30


ご、ごめんよ、きょーこたん!!!!
クリスマスなのに変なお勉強させてっ!!!(作者渾身の涙)。