魔法の国のキョーコさん@花のワルツ 2.5




倖一さんと楓さんが手を繋ぎ、葵さんはまたばたばたと走っては、その中庭を歩いて、全てがお菓子の形で出来たお城を珍しそうに眺めます。


そして、中庭を抜けて、裏庭に出ると、沢山の王宮で飼っている動物に出くわしました。まるで、その中には、この世において珍しい動物が沢山います。倖一さんは、その数々の動物のオリ中に、「ヒツジ」がいるのに気付きました。

「葵様。あれがヒツジですよ。」
「へぇ〜〜〜〜〜ふわふわしているね。アレの毛で母様が編んでくれた手袋を今僕は、はめているんだ。」
「私のもっ!!!」
「そうでいらっしゃいますね。」

倖一さんが葵さんと楓さんの頭を撫でてあげているうちに、ヒツジが一度葵さんに向かって「メェ」と鳴きました。

「な、鳴いたよっ。」
「もっと鳴かないかしら?」

ふわふわのそれを見て、大喜びの楓さんと葵さんを見ていて、そういえば、キョーコさんも見たいと言っていたと、蓮様が言っていたのを思い出しました。帰ったら教えてあげようと思った倖一さんなのでした。


*****





自室で監視鳥の目の中から、キョーコさんたちを覗いていたレイノさん。
蓮様が送った挑戦的な視線をしっかり受けとって、鳥から意識を離しました。
しばらくして、支度の済んだ妹姫が、きらびやかなドレスを纏い入ってきました。

「お兄様、蓮様はしっかりいらしていて?」
「あぁ、来ているよ。それはそれは大事な、籠の中の姫を連れてね。あの様子では誰にも触らせない勢いだぞ・・・。」
「姫はお綺麗でした?」
「そうだな…まぁ…先日会った妖精少女とは、月となんとか、だったな。」
「お兄様がそう仰るなんて…。わたくしのこのカッコでは姫に劣るかしら?」
「さぁ…別に…。」
「・・・・・・。早く、お兄さまもお着替えになって下さいませ。控え室で皆が待っていますわ。」
「はいはい。」

レイノさんは立ち上がると、妹姫の後ろについて、面倒くさそうに部屋を出ました。







*****




「キョーコちゃん、裏庭に『ヒツジ』がいたよ?」
「ゆ、倖一さん、本当ですかっ????」
「本当、本当!」
「キョーコ姉さま、本当よっ。メェって鳴いたもの。ふわふわだったもの!」

葵さんと楓さんが、真っ赤な頬をしながら、教えてくれます。おかげでキョーコさんはヒツジに会いたくて仕方がなくなってしまった様子で、目を輝かせて窓の外を覗きにいきました。


蓮様に、「行っていい?」と目を輝かせて目だけで懇願したキョーコさんに、

「キョーコちゃん、もう、始まるから…」

そう言って、蓮様は首を振りました。


きっと今の時間を逃してしまえば、外に出られる機会は無いに決まっています。キョーコさんは、とても残念そうな顔をしました。

「ココで見なくても、また別の機会に見られるよ。」
「そうですね・・・。」
「キョーコ、ヒツジが欲しいのか?」

王様が、キョーコさんに向かってそう語り掛けました。

「はい・・・。」
「そうかヒツジか。そういえばウチの王宮にはいないな。」


王様は顎に手を置き、王宮の中にある、動物園を思い浮かべます。周りの国から、何かにつけて祝いといって届くのは各国の珍獣ばかりで、普通の動物がいない事に王様はようやく気付いた様子です。


「アレの子羊の肉は煮込むと美味いからな。若しくは『ジンギスカン』と言ってだな、これまた随分と遠くの、神が沢山住まうという国の料理なんだが・・・・沢山の野菜と一緒にアレの肉を焼いて食べると美味いと言うな。そうだな、今度そのジンギスカンとやらを作らせるか・・・・。」

そして料理を思い浮かべてしまった王様が、思い出したように王様が一言、「そういえば、腹が減ったな」と呟きました。


「ち、違いますっ・・・・!!!食べたいんじゃないんですっ!!!!ふわふわの毛糸が欲しいんですっ!!!!」


キョーコさんは、自分が考えていた事と全く違う、王様のおかしな発言に、半分涙目になって大きく首を振り、否定をしました。

「なんだ、違うのか。」
「冬に、あんなにあたたかい毛で服を着られるようになったら、皆がとっても幸せになります。今は貴重な毛糸も、沢山飼えば……普通に着られる様になるかもしれませんから!!」
「なるほど。ふむ。わが国で育てられるような動物なら考えてみよう。」


王様は、うんうん、と頷きました。


「王、遅れましたが。」

ぽんっと目の前に湧き出てきたのは、蓮様のお兄様とその奥様で、王の前で跪き挨拶をした後、蓮様とキョーコさんに向かって、やあ久しぶり、と手を上げてにこり、と笑うと、横に座りました。

彼は名前を椿さんと言いました。今日は来る前に外交の長としてこなさねばならない仕事の山に追われ、遅れてきたのでした。

「椿よ。ヒツジを数頭飼いたいんだが。ヒツジがいる国から取り寄せて、オレにクリスマスプレゼントにくれないか?」
「は・・・ヒツジですか?なぜまた急に?」

普段から、前置きも無くいきなり結果から話し出す父王の癖は知っておりましたが、来て早々唐突な王の要求には、慣れた椿さんも少しだけ驚き、更に、


「キョーコが食べたいんだそうだ。」
「ち、違います〜〜〜〜〜!!!毛糸〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


涙目でキョーコさんが驚き、椿さんは「ははは。」と、大きく笑いました。蓮様は一つ、ふぅ、と息を吐きます。楓さんと葵さんは、「椿兄様、我が王宮にもヒツジ、飼ってくださいね?」と言って、二人で目を輝かせました。


「オレがヒツジを取り寄せられなかったら、誰からも怨まれそうだな。」


椿さんは、共について来た、秘書の蘭さんに向かって言いました。


「『ヒツジを分けて欲しい』とメモしておいてくれ。あとで各国の王に直接願い出てみよう。」
「はい。」


蘭さんがいなくなってしばらくした後、王宮の人間がやってきて、「お時間ですので広間へ」と言いました。










まだまだ続くのだ☆



2007.04.30