魔法の国のキョーコさん@夏の夜の夢 4



一方その時、お城では、大変珍しい光景が広がっていました。


自室のベッドの上で本を読んでいた蓮様の元に、数え切れないぐらい沢山の妖精たちが集まって来ていました。



「蓮様っ!!!なんですか、この小さい子供達のようなものの大群はっ!!敵がせめてきたんじゃないでしょうね?!」



口うるさい宰相は、蓮様の部屋にいきなり大群になって現れた妖精に驚き、目を白黒させています。


倖一さんは妖精に慣れているのかすまし顔で蓮様の傍でスケジュール管理を続けています。


「コレが妖精だよ。昼間もオレに会いに沢山来ていたし、普段からお前の横にも居るよ。彼らが人に実体を見せているのは・・・何かあるときだけだよ。まあ、いいから、彼らはオレに何か用事があるようなんだ。話を聞かねばならない。静かにしてくれないと話が聞こえない。・・・・・どうした?何かあった?」



『『『『『『『『『『キョーコちゃんが食べられちゃう〜〜〜〜!!!!早く助けに行ってあげて〜〜〜〜〜〜!!!!!』』』』』』』』』』



「何だって?」



『今ね、キョーコちゃんの目の上に!』
『浮気草の花の汁を塗った男が居て!』
『名前をね、レイノって言ってて!』
『ベッドで寝ているキョーコちゃんに〜〜〜〜!!!』
『悪さをしようとしているんだ!!!!』




「なるほどね・・・・。」




『大丈夫なの?』
『急がないの?』
『食べられちゃうよ???』
『キョーコちゃん、可愛いからっ!!!!』
『キョーコちゃん、あとですごく悲しむよっ!!!』




『『『『『『『『『『どうして信じてくれないのっ!!!蓮様のばかぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!!』』』』』』』』』』





冷静な声を発した蓮様に、妖精達が驚き、キョーコさんの危機を信じてくれない連様に、ついには泣き出す妖精までいます。


「大丈夫だよ。」


『何が大丈夫なのさっ!』
『キョーコちゃんのトコ早く行ってあげてよっ!!!』
『食べられちゃってもいいの?』
『キョーコちゃん、もう好きじゃないの?』
『なんでそんなに落ち着いていられるのさ〜〜〜〜〜!!!!!』


「落ち着いているわけではないけど・・・・・」







――ぽん・・・・・☆


――どさり。









「ほら来た。」


ネグリジェ姿のキョーコさんが蓮様の腕の中に収まり、その身体を受け止めると、大事そうに抱えて、その落ちた衝撃に目を覚まし、ぱちぱち目をしばたいたキョーコさんに語りかけました。


「おはよう。久しぶりだね・・・。」
「敦賀さんっ・・・・vvvvvvvすき、すき、すきっ・・・・vvvv」
「はは・・・確かに浮気草の花の汁を塗られたね・・・・。」



『『『『『『『『『『キョーコちゃん!』』』』』』』』』』




ちゅ、ちゅ、ちゅ、と何度も主人を見つけた犬のように蓮様の唇に口付けて、ぎゅう、と嬉しそうに抱きつきます。一番最初に目に飛び込んできたものに恋をする浮気草の力は、蓮様にもしっかり効きました。



驚いた顔をして、口をあんぐりと開けているのは、口うるさい宰相。さすがの倖一さんも驚いた様子で、真っ赤に照れました。そして薄いネグリジェ姿のキョーコさんのために、蓮様のシャツを探しに奥へと下がりました。



「この子には王家のお守りを渡してある。何か身に悪い事がおきたら・・・渡したオレの元にすぐに飛んでくる。だから大丈夫、と言ったんだ。・・・・ってこら、キョーコちゃん・・・ダメだよ・・・。」


そう喋る傍から、蓮様の首に腕を回し、唇に口づけねだり始めたキョーコさん。


妖精さんは、

『『『『『『『『『『じゃ、じゃあ、帰ろうかっ!!』』』』』』』』』』


キョーコさんの可愛い仕草に照れて真っ赤になってそう言って、キョーコさんの無事を確かめると、その大量にいた小さな妖精さんたちはその場を去りました。


「れ、蓮様っ・・・。わ、わたくしも今晩は下がります。明日の朝は7時ご起床ですからな。うおっほん・・・。」


うるさい宰相も、キョーコさんの初めて見る可愛らしい仕草さに、くるり、と背を向けてうるさい小言を続けることなく居なくなりました。


「ねぇ、キョーコちゃん・・・。君はどうして・・・レイノ・・・とやらにこの薬を塗られたんだろうね?・・・・浮気草の花の汁を塗られたんだよ?君は彼に何をした?そんなにすぐに惚れられるような事をしたのかな・・・・?」
「敦賀さん・・・・・v」

キョーコさんはちっとも人の話など聞いていません。うっとりと、腕を首にまわし、口付け、ねだり続けている唇から見える蓮様の顔だけを、愛しげにじっと見つめています。

「仕方ないな・・・この薬は・・・・ダイアナの花を摘んでこなければ治らないのだったかな・・・・・。」

「蓮様・・・。キョーコちゃんの服を置いておきますよ。それから・・・ダイアナの花は明日の朝、ご用意致します。今は必要ないでしょう?この二週間会えず声も聞けずに我慢されていらしたのですから・・・。」


倖一さんは意味深に、にや、と笑い、部屋を出ました。
蓮様が無表情で、ふぅ・・・・とついたため息は、倖一さんにも、そして蓮様にちゅ、ちゅ、と恋をねだり続けるキョーコさんにも届きませんでした。



**********




さて・・・・・。



手を出そうとした瞬間、その姿が消え、ベッドサイドに一人残ったレイノさんは、珍しくじっと集中して、居なくなったキョーコさんの気配を追いました。すると、見えたのは、この国の城、そして、第二王子に口付けをねだるキョーコさんの姿でした。


「さすがに・・・抜け目のない男だったか・・・・。」



浮気草の花の汁を使った人間の事は、ダイアナの花を使って目を覚まされたときに全て忘れてしまいます。明日の朝になったら、きっとダイアナの花の汁を塗られて、レイノさんに出会ったことも、蓮との今夜の事も、全て忘れてしまうのであろう、と思いました。そして、今日のキョーコさんの、恋をねだる情熱的な様子を考えると、「ある意味あの男へのプレゼントなんだからいいだろう・・・・。」と一人つぶやきました。


テーブルの上に、嫌味のように、幸せの花、ダイアナの花を置くと、再びコウモリの姿になりました。「次は・・・仮面舞踏会を開いて、否応なしに踊って・・・ストレートに口説いてやる・・・」と付け加えてつぶやくと飛び立ち、帰路につきました。





*****



あくる日の朝、その浮気草よりも強力に幸せになれるダイアナの花の汁を塗って貰ったキョーコさんは、その浮気草の効力を失い、元に戻り、蓮様の腕の中で起きました。しかしキョーコさんは、なぜ自分が蓮様の腕の中にいるのか、そして、体中についた蓮様の印に驚き・・・・真っ赤に照れながら尋ねました。


「つ、つるがさん・・・・?お、お久しぶりですっ・・・でも・・・・な、なぜ私は今このお城にいるんでしょうか・・・・?」
「おはよう・・・・ようやく目が覚めたようだね。」
「なんだかすごく長くて・・・・すごく・・・・いい夢を見ていた気がするんですけど・・・・・。わたし・・・昨日の記憶がすっぽり無いんですっ・・・・。なぜ???どーしてでしょう・・・・???」
「まったく・・・・君の人の良さと無防備さには、本当に参るよね・・・・。もう、怒りたくても怒るに怒れないよ・・・。」
「・・・・・・・?」
「まあ・・・・情熱的な君の夢も、オレは見せてもらったから・・・・。」


ちう、とキョーコさんの鼻先にキスをした蓮様は、「君は本当に妖精に好かれているんだね。君を守ろうと必死になってくれたんだから。」と言いました。

「・・・・・?」
「君のおうちはね、妖精の国の入り口だから、オレはそこを大事に守るのも重要な仕事なんだよ。さあ・・・久しぶりに、我が家に帰ろうか。君の作った幸せ鳥のタマゴサンドが食べたい。」
「あの、幸せ鳥、沢山雛が生まれて育ったら、ツガイでプレゼントしてもいいですか・・・?」
「誰に?」
「あれ・・・・?誰でしょう?誰かにあげなければいけない気がしたんですけど・・・・?」
「・・・・・そんな約束までしたのか、全く・・・・。」


ふるふる、と首を振った蓮様の部屋に、口うるさい宰相が入ってきました。

「蓮様っ!!!・・・・っと・・・・あの・・・・」

キョーコさんが蓮様の腕の中だと気付いて、真っ赤に照れてその宰相はくるり、と後ろを向きました。


「うおっほん!!!!」



しばらくの間、口うるさい宰相と、倖一さんは、キョーコさんを見ると照れて真っ赤になって、目をそらすのでした。


そして、蓮様に幸せの花、ダイアナの花の汁を塗って貰ったキョーコさんは、以前にも増して蓮様と幸せに生活しています。そして、家の周りにも、幸せの花を育てはじめ、あっという間に庭一面に幸せの花が咲き乱れました。そして、幸せ鳥はさらにその数が増え始めました。


そうしてキョーコさんは自分で育てた幸せの花、ダイアナの花を摘んで部屋に飾り、たまに蓮様に花の汁を塗って貰っては、相変わらず嬉しそうに「コレぐらい敦賀さんがすき」と言って、大変幸せな気持ちになるのでした。




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おまけ。


翌朝、隣の国のアンニュイ王子の寝室にて・・・・。


「お兄様っ!!!!本当に偵察には行って来て下さったのです??」
「・・・・・・・・。」

――ぽん☆

「レイノ君、ひどいよっ!!!帰ってきていたならそう言ってくれないと!!!朝迎えに行って探しちゃったじゃないか〜〜〜〜!!」

「・・・・・・・・・|||。」

「お兄様っ!!!!黙っていらしては分かりませんわっ!!!一体どんな姫だったのですっ!!!!」

「レイノくーん!!!そろそろもとの姿に戻してよ〜〜〜〜〜!!!」


「・・・・・静かにしてくれないか・・・・朝は頭に響くんだ・・・・。」




おしまい☆









2007.04.09


とにかく蓮様を喜ばす為のシリーズ・・・・(笑)。
書くのは大変楽しかったでっす・・・・。ふふ・・・。