魔法の国のキョーコさん@夏の夜の夢 2







「・・・・なんだこの森は・・・・。」


目的の森へと着いてすぐに居心地の悪さを感じたレイノさん。

それはその通り、その森を抜けると、妖精の国が広がっていて、ココは魔法の国と妖精の国との境目です。


『あの人はだあれ?』
『あれは誰だい?』
『キョーコちゃんと同じ国のものじゃないな・・・?』
『なんだか違う国の匂いがするよ!!』
『なんだか怖いわ。』
『近づいたらダメだよ!』


にぎやかな声がひっきりなしにレイノさんの耳に入ってきます。


「うるさいな・・・・。」


つい、そんな独り言をもらすと、付いて来たお供の彼が不思議そうな顔をします。


「何?レイノ君。僕何も言ってないよ?何か聞こえた?」
「・・・・・・・・・・・・。」


アレもどうやら普通の人間には見えないらしい。
そう理解したレイノさんは、独り言を言うのをやめて、木の上から覗いていた妖精の一人に話しかけました。

「おい。」

『きゃあ!』

「何もしないから話を聞け。」

『そ、それが人に物を頼む態度なのかしら?』
『聞かなくていいよ!』
『お前なんかこの森から出て行け。』

「オレは単に・・・この森のキョーコ・・・という少女に会いたいのだ。」

『キョーコちゃんに?』
『キョーコちゃんだって?』
『お前、キョーコちゃんを知っているのか?』
『キョーコちゃんのお知り合い?』

「(いちいちいちいち・・・・・・賑やかだな・・・・・・)。オレはレイノ。・・・この国の王とは面識がある。いちおう隣の国の王の子だ。」


『え?王子なの?この人。』
『それは、信じていいみたいだよ。』
『たしかレイノって名前で、なぜか人には見えないものが沢山見えるという話を聞いたよ。だから僕達が見えてもおかしくないんだよ。』
『へぇ〜・・・キョーコちゃんや蓮様以外にオレ達が見える人がいるなんて珍しいね!』


「・・・・・・。それで・・・彼女は今どこら辺に住んでいるのだ。」

『えー・・・教えていいのかしら?』
『どうかなあ・・・?』
『だって今蓮様はお城へお戻りでキョーコちゃん一人よ?』
『そうだよ!キョーコちゃんをよろしくねって、蓮様が言ってたって仲間から聞いたよ!』
『そうだよね!』
『『『『『自分で見つけたら?』』』』』


「・・・・・・。」


どうやら、キョーコと言うのは今一人らしい。賑やかな妖精たちのおかげで、それだけはわかって、レイノさんはすたすたと歩き始めました。


『そっちへ行っちゃダメだよ!』
『そっちは違うよ!』
『キョーコちゃんちはあっちだよ!!!』


「・・・・・(何て分かりやすい)・・・・・。」


ダメだと言われるように進むと、人が歩いたような小道が出てきました。
右を見ると、一人の赤い頭巾を被った少女が、バスケットを持って歩いています。



「ようやく人らしい人を見つけたぞ・・・・。アレか・・・。」


『どうしよう、見つかっちゃったよ!』
『大丈夫かな?』
『蓮様に報告した方がいいと思う?』
『そうだよね!!』
『じゃあ、ボクはキョーコちゃんの傍にいるよ!』
『じゃあ私はもっと沢山の仲間呼んで来るからね!』



――ぽん☆



妖精が一気に傍からいなくなり、レイノさんももう一度コウモリの姿になると、お付の彼に「しばらくミロクのところへ戻っていろ」と指示をして、その赤ずきんを追いかけました。


「えーっと・・・・久しぶりに一人だからいいよねっ♪」


レイノさんが追いかけた先には、綺麗な水の張った泉が広がり、そこで赤ずきんちゃんは水浴びをしようと(相変わらず)靴を脱ぎ、頭巾を脱ぎ、靴下を脱ぎ、綺麗に木の枝に引っ掛け始めました。


「おいおい・・・・。」


確かにこんな誰も来ない場所だし、水浴びもするだろうが・・・・。さすがにレイノさんも初めて会う妖精少女の水浴び風景を見届けるのは(一応)無粋かと、人間の姿に戻りました。


「オイ・・・・お前・・・・。」

「い、いやぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!!やっぱり敦賀さんの言うとおり〜〜〜〜!!!!約束破ってごめんなさい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

「・・・・・こんな所で何をしている。」

「暑いですし・・・身体を清めに・・・・み、水浴びをしようと思って・・・・って・・・貴方は誰ですか?」

「オレ?オレはレイノ。」

「私はキョーコです。」

「お前が、キョーコ?へぇ・・・。」


どこか品定めでもするような目線を感じたキョーコさん。
不思議そうな顔をして、聞き返しました。

「・・・・・・?私を知っているのですか?」

「お前は・・・オレを知らないのか。」

「えぇ、はじめまして。」

「本当に王家の一員か・・・・王家の人間といえども所詮は森の妖精少女、か。」

「はい・・・?何のお話ですか?」

「いや。」

レイノさんはブツブツと独り言を言いながら口の中でその少女を観察し、妹姫に「普通だが無防備で、まあそれなりに可愛げはあった」などと、妹のプライドが適当に満足するような答えを導き出し、そして、そこへ座り込みました。


「あぁ・・・疲れた。なんでオレがこんな役など・・・・。」

「お昼、食べますか?」

「・・・・・・・?」

「サンドイッチでよければ、ありますよ?こんな森の奥まで来る人なんて・・・・めったに居ないのに・・・よくココまで来られましたね?」

「妖精が・・・・案内してくれたからな。」

「あなた、妖精さんが見えるの???」

「・・・・・・見えるが・・・何か?」

「すごいっ!敦賀さんようやく見えるようになったのに!」

「別にオレは・・・この能力があって良かったなどと・・・これっぽっちも思ったことは無いがね・・・。まあ・・・・じゃあそのサンドイッチとやらを頂くとしよう。」

「サンドイッチ・・・食べた事ないんですか?」

「・・・・・オレはあまりモノを食べないんで。」

「美味しいですよっ。今日は幸せ鳥のタマゴサンド!今朝の採れたてです。」

「お前のウチは幸せ鳥を飼っているのか・・・?」


――幸せ鳥はこの国の国鳥・・・王家だけが飼える鳥だろう・・・この世に10羽いないんだぞ・・・・。


思わずキョーコさんの顔をじっと見つめてしまったレイノさん。
キョーコさんは、幸せ鳥について嬉しそうに話し始めました。


「・・・・敦賀さんがツガイの2匹の幸せ鳥をプレゼントして下さったんです。幸せ鳥は一度ツガイになると一生そばで添い遂げるので・・・・その・・・・あの・・・・結婚のお祝いに・・・・って。えへ。す、すっごく可愛い鳥なんです。雛も沢山かえったんです。大きくなったらもっと沢山のツガイができますっ!!!・・・・って幸せ鳥に興味ないですか・・・・・?」

「いや・・・。」

「ふふ、美味しいですから。大丈夫!一緒に食べましょう?」


嬉しそうに、その幸せ鳥のタマゴサンドをほおばるキョーコを見ていたレイノさんは、ふとキョーコさんに興味がわきました。


「お前は・・・王家の人間になるのだろう?」

「そう・・・・ですね。よく知ってますね。」

「・・・あちこちの国々のパーティに出たり・・・しないのか。」

「敦賀さんがそういう所に私は出なくていいというので・・・・あまり連れて行ってもらったことはありません。だって結婚していますからダンスパーティなどに行っても私は参加しませんし!でも呼ばれれば行きますよ。お隣の国にも行ってみたいし、お隣の隣の国もとても面白い国だと聞きました。そんな事を聞くなんて・・・貴方もパーティには普段参加されるのですか?」

「そうだな・・・オレも招待状は来るが殆ど参加しない。面倒だよ、ダンスパーティなんて・・・。でも・・・呼べば、来る・・・ね。戯れに仮面舞踏会でも開こうか・・・・。」

「・・・・・?」

「いや。」



森の妖精少女はとても純真無垢で、まっすぐに綺麗に澄んだ目を向けてきます。普段、嫉妬とプライドに満ちた姫や女たちの目とは違う、どこか小動物のような可愛らしい目で、そんなキョーコさんを見ているうちに、キョーコさんに手を出してみたくなってしまったレイノさん。


食後、しばらくするとキョーコさんは本を片手に一人うとうと。無防備にも程があると思いつつ、普段はにぎやかな妖精たちが、とても静かに沢山彼女の傍に寄ってきて、彼女の周りでじっと眠っている様子を嬉しそうに見守っているので、レイノさんもさすがに手を出さずにその様子を黙って見ていました。が、夕方が近づき、キョーコさんが目を覚ますと立ち上がって言いました。



「家まで送ろうか?日が落ちるとこの辺も危ないだろう。」

「せっかくこの泉まで来たのに・・・身を清めずに帰るのですか?」

「・・・・・・・?」

「だってココは清めの泉。何か大事な行事があってここまで来たのではないのですか?」

「いや・・・・単に妖精の森を散歩しようと思ってね。」

「ふーん・・・。じゃあ、帰りましょう!」



レイノさんとキョーコさんは、並んで元来た道を歩き始めました。






2007.04.08

まだまだ続きます☆
送り狼と赤ずきんちゃん・・・(笑)。