魔法の国のキョーコさん@犬の王子様番外編
―― 最高に不幸せで最高に幸せだった蓮王子の一日編 その2―― 








――その日の夕方。


「さあ、帰らないとっ!!」


ようやく帰る準備を始めた女の子を見つめて、倖一さんが「蓮様、戻してもらわないと、私たちも帰らねば。」と言ったのに、蓮様は「いや、あの子に少し興味がある。」と言って、譲りません。

「蓮様、でも私たちも城に戻らないと、皆が心配します。」
「大丈夫だよ。」


蓮様がNoと言ったら誰も逆らえないので、その少女の歩く道を後ろからついていきます。


「おい、キョーコ。」
「ショータロー。・・・・・・・・・夕飯、食べていくんでしょ?」
「・・・・どうせお前一人で食べてもつまらないだろ?」
「暇なくせに。」
「暇じゃねーよ。ったく・・・お前一人でメシ食うの嫌いだろう。」
「き、嫌いじゃないわよっ。」
「正直に寂しいから一緒に食べてくださいって言えばいいんだ。」
「・・・・・・ご両親と喧嘩したんでしょ。」
「・・・・・うるせぇよ。」
「正直に食べさせてください、って言えばいいのよ、くすくす・・・。」



キョーコ、と呼ばれた赤ずきんちゃんは、そうして金色の髪の男と共に、家に入ってしまいました。





「蓮様。入ってしまいましたけど・・・・。元に戻れませんね。」
「そうだね。明日彼女が出てくるまで近くで待機しよう。」
「えぇっ。蓮様に野宿なんてさせたと知れたら、宰相にどんなに怒られるかっ!!」
「平気だよ。野宿ぐらい。昔、「一人で泉で身を清めて来い」といわれて、父に外に放り出された事がある。3日帰らなかったけど父は喜んでたよ。大人になったって。」
「蓮様。それはお小さいときの話。3日後には何があるかお分かりですよね?戻って、魔法使いに元に戻してもらいましょう。」
「ヤダね。オレはあの魔女は嫌いだよ・・・・。」
「そんな事言っている場合ですかっ!!!」


――ばたんっ



ドアが勢いよく開いて、「うるせぇな。」と言って、ショータローと呼ばれた男は、キョーコさんが作ってあった魔法水を桶に汲むと、なんと蓮様に向かって、思い切りぶちまけました。



――ばしゃんっ☆


「蓮様っ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・。」



――ぱた、ぱた、ぱた・・・・・・・。



蓮様の鼻の先から身体隅まで魔法水が滴り落ちます。
おろおろするのは倖一さんで、どうしたらよいのか、何と声をかけるべきか分からず、とにかく鳥目で目が見えない上、羽が濡れたら身動きが取れません。濡れないように一時、キョーコさんの家の窓際に避難しました。

蓮様は顔に滴り落ちる魔法水をぺろり、と舌で舐めて、「・・・・強力な、いい魔法水だ・・・・」と一言だけ、口にしました。



「れ、蓮様・・・・。」
「大丈夫だよ。余計人間に戻れなくなっただけで・・・・・。」


魔法を掛けた人間の家の、自家製魔法水などかけられては、もうひとたまりもありません。かけた魔法をより強固にしました。仕方なく、蓮様はキョーコさんの家の横の、藁が重なったところに伏せて、明日を待つことにしました。



その晩、倖一さんの嘆き声と恨み声がショータローさんの家の前で響き、一晩中ショータローさんの機嫌が悪かったのは言うまでもありません。



『あぁ、王子が藁の上で眠るなんて・・・・。』







続きます☆




2007.03.23