数週間後、本当にあの男に飲みに連れて行かれ、オレはサシで彼に向き合った。彼の知り合いが経営している店だという。彼のために仕切られた席に通され、幸いにして他の客とも目を合わせずに済んだ。

「はい、お疲れ。いや、君がさ、なんだか思いつめているのに気付いたから誘ったんだ。プライベートだから、誰にも気兼ねしないで済むし。君の内側、この間は言わなかったけれど今日は言わせてもらうから。ついでに俺の内側も、見せてあげようか。」

彼はグラスに一口つけるとすぐにタバコに火をつけて、ふぅ、と吹いた。

「・・・・・?」

オレが怪訝な顔をしたのを見て、彼は一度くすりと笑うと、手許のそれが短くなってぎゅっと押し潰してからようやく口を開いた。

「君を昔からTVで見ていたけど・・・・。オレに似ているからさ、よく分かるよ。だからトークに呼んでみたんだ。自分の若い時を見ているようでね。自分じゃ気付いてないでしょ。というより、笑顔で全部隠せてると思ってる。でも無理だね。そろそろ、辛いんじゃない?長いこと君と同じようにオレも感情を隠してきたから、分かる。その笑顔が偽物だってね。」

「そうですか?くすくす。」
「その、くすくす笑いもね。」
「おや、では無表情を通すしかありませんね・・・・。」

苦笑して、全て分かった風のこの男を前にもう取り繕うのをやめて彼の言う事を黙って聞いていた。
あの子と鳥君以外に初めて、オレの笑顔が偽物だとはっきり言うこの男の言う事が気になったのかもしれない。

「いいかい?オレはね、君が番組でさらりとオレに厭味を言ったように・・・・若いときに望んで結婚したけれど、途中で見せられない自分に苦しくなって当時すぐに別れた。別れたけど・・・・すごく後悔した・・・・。まだ、ずっと一緒にいるよ。今はもう・・・もちろん、オレの全てを見せているけれど・・・いつかまた籍をいれるかもしれない。だから君が、恋や愛や結婚なんて制度にこだわらないのも、よく分かる。特別な人間を作りたがらないのもわかるけれど。それでも、誰か、君のその内側を分かってくれる子は・・・いないの?」

「だから、ふられたんです。他に男がいるんですよ。」
「それだけで、済むわけ?」
「・・・・・これからもそのままでしょうね。」

それならどこまでいっても必ず傍にいられる。

突き放すわけでもなく・・・・・そばに置いたまま・・・・・。

それが・・・・・本当は一番苦しいのは、分かってる。


何度かした・・・・演技のキス、酔って正気でない偽りのキス。
それだけで、こんなに動揺しているのに・・・・・・。


「・・・・・・早死に、するつもりなの?」
「そうですね。それも・・・・いいと思いますよ。」

この苦しさから、逃れられるなら・・・・・・。

また自嘲気味な笑みが出そうになって、グラスに口をつけてその笑みをごまかした。

「その他にはいないの?見せられそうな子。」

「・・・・・その子に会うまで・・・誰もそんな子、いなかったですから。会ってから後も出てこなかったし、ふられてからも・・・誰もいない。最初で最後ですよ。だからもう見せる事など、ないでしょうね。」

「本当に君は・・・・・オレに考え方も生き方も、そっくりだよね。オレも最初、そう結論付けていた。だから、言うけれど。オレもね、むりやり奪い取ったんだよ。もう一度。「新しい彼がもういるから」、と言って聞かなかった彼女をね。他に男がいようと、関係なかったかな。どうしても忘れられなくて、苦しくて、このオレを見せられるのが彼女だけなら、なんでもいいからオレの傍にいて・・・って・・・。彼女はそんないつもと違うオレに最初戸惑っていたよ。くすくす、そうだよね。ずっと温和なオレを演じ続けてきたんだから。でも、すぐに戻ってきてはくれたよ。実際は強がりで、他に男は出来なかったと、そう言っていたけれど。オレはそれ以来、随分と生きる事が「楽」になった。TVの前ではね「温和で紳士」な君を続けてもいいとは思うよ。それが敦賀君のキャラなんだし、オレのキャラでもあるから。でもさ、せめてプライベートでは・・・その彼女に「温和で紳士」を押し通さずともいいと思うんだよね。」

「・・・・・・・この間の収録の日の夜、電話でその子に同じ事を言われました。あまりにタイミングがよかったので、驚きましたけど。「紳士」をやめて、自分に見せるように「いじわる」なぐらいがちょうどいいのだと、そう言っていました。そうすればオレが「楽」になるのだと・・・・・。」

「え、君その子に「いじわる」できるの・・・?なんだ、てっきり「紳士」を押し通して、笑顔で何の変わりなく演じ続けているのだと思っていたのだけれど。」

「最初に会った時・・・・お互いがお互いを嫌いでしたから。嫌いなんていう感情が生まれた事自体が本当は珍しい事だったのかもしれません。誰にも干渉されず・・・・誰にも干渉せず、だったから。」

「干渉、か。それが他人への興味にも通じることなのかもしれないけどね・・・。まぁ・・・俺もそうだったよ。この業界にいたのにね。」

「だからといって、他の子にそれができるかというと・・・・。あなたは・・・・今の彼女に全てさらけ出せるようになった今、それはできますか?」

「くすくす。どうかな。でも、君をこうやって飲みに誘って自分の本音を語れるようになった分、少しは変わったかな。君の性格がオレそっくりってのもあるだろうけど・・・・余裕が出てきたのかもね。愛されている実感があるから。だから、君も早く、取り戻しておいでよ。その子だって、君のこと嫌いじゃないだろ?」


嫌いじゃ、ないとは思うけど。
心から信頼を寄せてくれているのは分かってる・・・・。


「何、まだこれだけオレの話を聞いても、出来ないの?」

彼はあきれたようにオレを見て、グラスの液体をくい、と流し込んだ。

「・・・・・・・・・・・。」
「まぁ、他に男がいて、それがその子が今幸せなら・・・・それを壊して自分のもとに引っ張るのは、正直なトコ、嫌な役だよね。でもせめて・・・・一度くらい君の気持ち、ぶつけて見たら?どうせ、一度も言ってないんだろ?君が最近男らしくなった気がしたと言ったけれど、それはすぐ傍に彼女がいたからだろう?君をそんなに変えられる彼女を失うなんて、本当にできるの?」

「くすくすくす。・・・・・・・本当に、オレの心でも読んでるんですか?本当に一番痛い所、ストレートに衝きますね。」

「特技だからね。今はそれであの番組持っているし。しかも俺と同じ人種なら、読まずとも分かるよ。」

「ホント、これが撮られていなくて良かった。録音なんて、仕掛けてないでしょうね?」

「その手があったね。これで君をいくらでも脅せたな・・・・残念。そこまで底意地悪くないよ、オレは。さぁ、飲みなおそう。」

「ホントですか?オレなら仕掛けたかもしれませんよ?だから、このテーブルの下になんて思ったんですけど。」

「君の底意地の悪さは、オレは似てないからな。TVでも散々オレをコケにしやがって。」

彼は少し悔しそうな苦笑いをすると、グラスを傾けて来て、オレも傾けた。

グラスを置くと彼はまたタバコに火をつけて肺深くまで吸い、オレにかからないようにか、上を向いて勢いよく煙を吐いた。

「君は温和だと言われているけれど・・・・本当は激しい気性の持ち主、だろ。」
「そうですか?そう見えます?」

「うん。感情が表に出るの、一生懸命・・・演技で、笑顔で、全部抑えてるように見える。」
「そうですかね?くすくす。」
「オレも、君と同じだと、さっきから言ってるでしょ。しかも君も俳優。自分を「隠す」事なんて、たやすいだろ?」

・・・・・・・・・・・。

「ふっ・・・・・・くすくす・・・・。」

「ははっ・・その笑いは・・・完全に図星だな。やっと一つ、君に勝てて嬉しいよ。くすくす。」


彼は今度は嬉しそうに、また勢いよく煙を吐いた。


彼女と鳥君以外に話した初めてのオレの本音。
また飲みにいこうと、言ってもらったが。
オレと似た他人に聞いてもらうことは・・・ある意味自己満足なのかもしれない・・・・・・。
でも少しだけすっきりした。
自分の頭の中を整理できたからかもしれない。


結論は、「それでも言わない。」


あの子の傍にはもう、違う男がいて、言わなければずっと傍にいられる。
よき理解者、なんでも話せる人物として・・・・。
あの子が、そんなに信頼を置く人物が他にいるとは・・・思えなかったのに。

思い上がりだったのだろうか・・・・?

どうしてそう思えていたのかすら、今では分からなくなってしまった。

あの子がオレに「敦賀さんが一生辞めないなら・・・・私も辞めません・・・・」と泣いて言ったその一言だけで、オレは彼女の信頼を強く得ているのだと思ったし、それ以来彼女は本当にオレに何でも話をするようになった。


それでも・・・・知らない間に彼と連絡を取り、出かけるようになった。
だからあの男には、オレ以上に信頼を寄せているのだろう・・・・。
一番身近にいる人物にモノを話すのは誰でもあること。
もうすぐ、オレは・・・挨拶だけで、よき理解者としてすら・・・話もしてもらえない人物に置き換えられるのだろうか。


自分は全てを隠しているのに、あの子には何も隠して欲しくない・・・・・。
今まで通り、全部話して欲しい・・・・・。


隠さないで。

内緒にしないで・・・・・・。






******





タクシーの硝子越しに写る電光色と景色がやけに眩しく、ぼんやりとそんな事を考えていた。

マンションのエレベーターを降りてキーを取り出すと、玄関先に小さく丸まったあの子がいた。

驚いて近寄ると、彼女はほっとした顔をした。

「な、何を・・・やってるの?」
「敦賀さんだぁ・・・・お疲れ様です。」

とろり、とした視線で丸まったままにこり、と笑った。

「また・・・・・酔ってるの?そんなになるまで飲んじゃダメって言ったのに・・・・・。」

「少し気持ち悪くて・・・家まで電車に乗れないと思って・・・途中で、降りて来たは良かったんですけど・・・敦賀さんがいない事まで考えてなくて・・・携帯も入らなかったから・・・このままいさせてもらっていました・・・・・。」


――この子はまた・・・・・・気持ち悪くなるまで飲んで・・・・・。
――何度オレは、泊めればいいんだろう・・・・・・。

「あぁ、ごめん、切りっぱなしにしてた。いいから、中に入ろう?少し横になったほうが、いい。」

蒼白い顔をした彼女の腕を引いて、リビングのソファに横たわらせると、水を持ってその横に立つ。
アリーがお気に入りの彼女を心配して、すたっとオレの横に控えた。

「最上さん?大丈夫?着替えも持ってこようか?楽な格好した方がいい。」
「いえ、いいです、このままで・・・・。」
「また・・・・・どうしてそんなになるまで飲んだの?」
「・・・・・明日、卒業の日なんです。敦賀さんに言ってなかったですけど。だから。」
「えっ・・・・?明日はオレ、夜まで仕事・・・・。」
「知ってますよ・・・社さんにスケジュール聞いてます。だから卒業の試験・・・・・・卒業できないかもしれませんね・・・・。」
「社長が、君に卒業しろって言ったんだろう?」
「ええ。・・・・・・・敦賀さんごめんなさい、水・・・下さい。」

彼女は眉間にしわを寄せた。

「あぁ、やっぱり着替えた方がいい。そんな真っ青な顔で・・・・。」

水を渡すと、もう有無を言わさず、いつも彼女に貸す部屋着を取りに行った。
リビングに戻ると、くたり、と意識が朦朧とした彼女が目に入って、思わず声をあげた。

「最上さん?大丈夫?着替えて。」
「敦賀さん・・・・・。」

またとろり、とした瞳で見上げられて、正直酔っているとはいえ、困る。
それなのに、苦しそうに渡したシャツを手から落とし、一向に着替えようとしなかった。

「着替えたほうが楽になるよ。」
「いえ、いいんです・・・・もう、卒業ですから・・・・。」
「何が。卒業の事はいいから、早く。」
「もう、敦賀さんからも卒業しないと・・・・いけないと分かってるんですけど・・・分かっているんですけど・・・・う・・・・水・・・・。」
「いい。分かった。オレが着替えさせる。」

もう君から・・・・卒業しなければいけないのは、オレ。
なのに。

酔って仄かに火照った肌に・・・・誘われる。
それでも・・・・・オレではない誰かと勘違いするぐらいなら、酔った彼女に手を出してはいけないと、前に決めたから。

努めて冷静に首だけシャツをかぶせて、シャツと下着を抜き取って部屋着を履かせて、スカートを脱がして。
それでも探るようにしてボタンを開けていたから、どうしても触れてしまう肌に、指が困った。


正直、自分がまた壊れなくて・・・・ほっとした。


「少しは楽になった?」
「・・・・はい・・・・。」
「一体誰と飲んで・・・・そんなになったの。」
「・・・石橋さん・・・。」


――またか・・・・・・・・。
――何度も来るけれど・・・・というより・・・・・なぜいつもここに来る・・・・。


蒼白な顔をした君をほって置けるはずもなくて、理由も聞かずいつもの通り上げてしまったオレもオレだけれど・・・・・・・。

「酔って知らない男のウチに行く位ならオレのウチでもいいと、言ったけれど。それでも君ね、・・・・男がいながらさすがに真夜中に毎回オレのウチにくるのはどうかと思うけど・・・。彼と飲んだ後、オレのウチに泊まってるなんて聞いたら・・・・彼だって怒るだろう。戻れないほど、彼のトコは遠いの?」

「石橋さんのおうち・・・・・?だって・・・・明日、卒業なんです・・・・もう、卒業しなきゃ・・・いけないんですよ?敦賀さん・・・・・。」

――・・・・・・・・それと卒業は関係ないだろう・・・・・・・。

「卒業試験、うまく出来る自信がないの?」

そう言ったら、彼女は目に涙を溜めて、身体を起こした。
くらり、と目が彷徨って倒れかけた身体を抱きとめると、体に腕をまわして強く抱き返され、「また」「背中を」撫でられた。

――待って・・・・・・・・シャツ一枚で抱きつかないで・・・・・。


柔らかな感触が、薄い布越しにオレの肌に伝わる。
今までだって、そのカッコでこのウチを歩いていた、けど。


――・・・・・手を出さないと、誓ったのに・・・・・・。


「卒業のお祝いに、少しだけこのままで・・・・背中、撫でさせて・・・・・。」
「・・・・・・・ダメ、だよ・・・・・。」
「お願いです・・・叶えて・・・・。じゃないと、卒業、出来ない・・・・・一度だけ・・・・・。」
「どうして・・・・・。」

彼女の掠れた声にも驚いたが、また自分もそうだったことに驚いた。

このままじゃ、もう止まれない・・・・・・。

「もう、敦賀さんから卒業しないと・・・・。もう、同じ所に・・・・もう・・・・・」

そこまで言うと、オレの身体に顔を埋めて、くたりと、身体から力が抜けた。

「最上さん・・・・・?大丈夫っ・・・・・?」

うぅぅ、と相変わらずの真っ青な顔で眉根を寄せた彼女は、それっきり、意識を手放した。

オレのシャツに、彼女がこぼした涙の跡がくっきり写っていた。



意識を失ってくれて安心したのか残念だったのか・・・・・。



ついにオレからも・・・・・・・・卒業・・・・・・・・・



また心が泣いて、千切れた。




*****




朝6時。ほとんど眠れなかったオレは、ベッドから身体を起こすと水を取りに冷蔵庫へ向かった。彼女は既に起きていて、まだ少し疲れた顔色のままキッチンで・・・前回来たときのあり合わせなのか・・・朝食を作っていた。

「おはよう。最上さん・・・・起きて大丈夫?」

「あ、おはようございます。昨日はすみませんでした。また・・・・・無理やり泊めてもらった上に、ベッドまで運んでいただいたみたいで・・・。それとあの・・・着替えまで・・・・していただいて・・・・。また・・・・あまりよく覚えていなくて、本当にすみません・・・・。」


――相変わらず・・・・・自分が何をしたかなど、覚えていないんだろうな・・・・。


彼女は申し訳なさそうに、そして少し照れて、うつむいた。


「あぁ、見てないから心配しないで。気分悪そうだったから悪いと思ったけど・・・・代えさせてもらったよ。でもまだ少し顔色悪いね。オレのことなんていいから、横になっていたほうが・・・」

「着替え、すみませんでした、本当に。私も・・・もう少ししたら、出ます。今日はお仕事お休みなんですけど、卒業試験のために社長に会いに行かなければいけないので、一度家に帰ります。」

「オレは君の相手をしてあげられそうにないけれど・・・・。ごめん・・・。」
「いえ、いいんですよ。言わなかった私がいけないんですから。一人でやります。」
「何時に社長に会いに行くの?」
「分かりません。」
「なんで・・・アポの時間もう決まっているだろう?」
「いえ・・・。社長から直接呼ばれるまで、私はひたすら事務所待機です。」
「そう・・・・。」

「敦賀さん、今日夜11時過ぎまでお仕事だって・・・聞いてます。もし、もし社長から11時過ぎまでお呼びがかからなければ、来てくれますか・・・・?」
「分かった、終わったらすぐに連絡するよ。」

「ホントですか?ありがとうございます。そういえば、一昨日かな・・・TV見ましたよ。本当に私が言った事と同じ事を・・・言われてましたね。笑っちゃいました。なんか、あの人、顔は全然似ていないんですけど・・・・・纏う雰囲気が敦賀さんに似ていますね。笑顔で厭味言うところとか・・・。でも、敦賀さんも負けてませんでしたね。蒼い火花が見えましたよ、私にはっ・・・くすくす。あ、怒らないで下さいね?」


――・・・・・・・・さすがだよね、最上さん・・・・・・。

本当によく、オレのこと分かってる・・・・。
オレも君の事、分かっているつもりだったんだけどね・・・。
随分、離れてしまったよね・・・。

「あぁ、一昨日放映だったんだ。あの彼と昨日飲んだんだよ。相変わらずまた、「温和で紳士」はやめろって言われたよ。」

思い出して苦笑が口をついて出て、彼女もオレを見上げて、薄く微笑を浮かべた。

「私もその方が、いいと、思います。でも絶対に、早死にだけは・・・・しないで下さいね。私より先にお仕事辞めないって約束、前にしてくれましたよね?私より先にいなくなったら・・・約束破った、ずるいって怒りますよ?早死にされるぐらいなら、私にでも厭味ぶつけてストレス発散して下さい。もう昔から・・・・慣れっこですし。覚悟は、しておきますからっ。」

彼女はいたずらっぽく笑って、再び鍋に向かった。

「・・・・・分かったよ・・・・・。」


それしか、言葉にならなかった。



――こんなに、お互いがお互いを・・・・分かっていて自分を見せられる・・・・・・こんな相手が他にどこにいるんだろう・・・・。


――あの男が言うように・・・・本当に奪ってやりたい・・・・・・・・。



またドロリと血の涙が流れて、それを押さえるように彼女のいる空間に背を向けた。