Hide&Seek 6 番外編 Introduce −Gravity−



あの人はとても、『引力』のある人だと、そう思った。



どんな人をも、魅了する。
皆を惹きつける。


昼は太陽のように、夜は月のように、ことさら大きく白く輝いて、私を照らす。 その「背中」に隠した偉大な『引力』が、私を引っ張る。 最初から、あなたにの演技に引かれてここまで来たから。




こんな大きな月の夜は、その『引力』の強さに、心が負けそうになる。




あの人は、誰のものでもあり、誰のものでもない。
あの人は、誰にでも優しく、誰も、そこに寄せ付けない。
強い力で引っ張っておいて、誰も、寄せ付けない。


そこに近づいてみたいと思うけれど、だれの追随も許さない。




辛い時にそっと受け止めては撫でてくれる優しい手。 幼い時にもらうはずだったであろう、些細だけど……とても大切な、「モノ」。



あの人はそれを、たまに私に見せてくれるのに。
私は、そこにただ「在る」ように、何も、できない。




あなたが辛い目をするとき、助けてあげたいのに。
あなたが優しさを分けてくれるなら、私も分けてあげたいのに。
少しだけ月が雲に隠れるように、優しく私から視線を逸らす。



そうしてあなたは、その『引力』で、私を惹きつけたまま。 あなたの持つ大きな光は、何をも恐れずに全てを照らす。 そして最後に届く、あなたのほんのわずかな光が、私を救う。



暖かで、優しい、光。





その優しい光の流れに、もう少しだけ、身を寄せさせて。
もう少しだけ聞き分けのない子供を演じさせて・・・・・・。




今はまだ、あなたのくれる、暖かくてやわらかい光の中で、眠っていたいの・・・。



























あの子はとても『引力』のある子だと、そう思った。




最初から、なぜか、目が離せない。
明るくて、あの子の笑い声がそこにあるだけで、周りも明るくなる。



皆が惹きつけられる。



はっきりした喜怒哀楽に、月の満ち欠けのようにくるくる変わる、その表情。オレをまっすぐに見上げる、日のようにきらきら輝く、大きい瞳。



その瞳の『引力』に、負けそうになる。
ものすごく幸福な白昼夢を、見たくなる。



オレの本当の気持ちを、教えたくなる。



目を閉じれば、君はこんなに輝いてオレを照らすのに。
君の強い『引力』に、オレはいつも雲隠れをする。
この場所は月の明かりが、届かないから。




オレは、ただそこに『在る』だけで、何もしてあげられない。




あの石に頼る夜に、手を差し伸べることも、抱き寄せてあげる事もできずに・・・・・。



なのに、夜の闇に染まった心が、君の明るい光を浴びたいと叫んでいる。





君を助けてあげられるのなら。
その明るい輝きがこの手に入るのなら。




月と共に満ちていく、時間と想い。 それはいつも、ゆらりゆらり陽炎のように形を変えて…オレの前に現われては、消える。




伝えたい想いは口に出来ず、溢れ出てしまう想いの欠片を、ほんのわずか落としてしまう。君はその欠片を、その小さな手で優しく大事そうに拾ってくれる・・・・・・・。 いつかその欠片が、君の手の中で丸い月の形になると、いい。




こんな大きな月の夜は、君の優しい手の中に、いてみたい・・・・・・。













2005年仲秋の名月の日にHide&Seek8が最後まで出来上がったので、最後に付け加えて、全体に変更を入れました。 蓮Ver.はベートーベンピアノソナタ「月光」を、キョーコちゃんVer.はドビュッシー「月の光」を流してイメージして作っていました。