風邪を引いたことが無かったオレの、たった一度の、熱。

すぐ冷めるもの・・・・・。

すぐ・・・・・・・・冷めてくれればよかったのに・・・・。

いつものように・・・・・。





Night Cross 6 ―Night Cross―






最終日の撮影も順調に進み、残すところ彼女と撮らなければならない最後の吸血シーンだけになった。

もうすぐそのシーンに入る時になって、彼女は椅子に座って震えていた。
スタッフも誰も声を掛けられない様子だったから、オレが声をかけた。

「最上さん?大丈夫?震えてるけど・・・」
彼女は真っ青な顔をしていた。
「だっ、大丈夫・・・です。すみません、最後だと思ったら何だか震えが。」
本当にそうなのだろうか?疑問が頭に浮かんだが、聞いても強情な彼女のことだから答えてくれないだろうと思って、深く尋ねるのは諦めた。
「そうだね、最後だね。大丈夫、また君の『ツボ』、ちゃんと押してあげるから。」
そうオレも誤魔化したが、思いのほか彼女の反応がいつもの彼女だったので安心した。



最後彼女を腕に閉じ込めて、最期のキスを繰り返した。
リュークともオレとも取れる最後のキス。

深く浸入しては、絡める。あの練習の時よりも、無意識の彼女がオレのキスに慣れたせいで、意識上の彼女との相性も反応も非常に良かった。
少しだけ息の上がったイリアに、オレは最後の台詞を投げかけた。

「これで・・・永遠に・・・・一緒だ・・・・愛しているよ・・・・イリア。」

今度は「イリア」を入れ忘れずに、彼女の首筋に牙を立てた。
そして、最期ににっこりと微笑んだ彼女の意識が落ちるまでオレは彼女にキスを繰り返し、最期の最期に、オレは彼女の身体をきつく抱きしめて、そのシーン撮りを終えた。

最後終わった後、また彼女はしばらく意識が本人に帰ってこなくて、からかったら、謝られた後、怒られた。

「ほ、本当に死んだようにならなくっても・・・。」
「ご、ごめんなさい・・・。あぁっ!敦賀さんっ!!!どうして・・・そのっ・・・「リアリティの追及」・・・・・・・・がっ・・・・・あのっ・・・・・!」
「言っていること、分かってる?最上さん・・・。それ、恥ずかしいから。」
「ええ、分かってます!!最後まで・・・・ホントに・・・・。」
真っ赤になりながら、ぶつくさ文句を言う彼女に苦笑しながら、チェックに誘った。
「追求の成果、見に行こうよ。」
「いやですよっ、恥ずかしいですから。」
「だから、それ、今更でしょ?オレともっと素敵なシーン・・・撮ったくせに。」
「あぁぁぁっぁっ!!それは言わない約束です!絶対見ませんから。」
オレはおなかを抱えて笑って、結局他のスタッフだけでカメラチェックが済んだ声とクランクアップの拍手が聞こえた。

彼女と挨拶を交わすと、不破が寄ってきて、一言だけ言って去っていった。

彼も、なんだかんだ言って最後まで台詞はそれなりだったし、周りへの対応も大人らしいそれだったから、性格はどうにしろ、プロなのだとは思った。

2時間後にうちの社長主催で行われる仮装パーティに向けて、彼女を着替えさせなければならないのだが、それにしても、彼女の見るからに嬉しそうな顔に、オレはまた爆笑した。
ずっと前に彼女の好きなドレスの皇女様役は撮り終わっていて、ボロボロの服ばっかりで、つまらないと嘆いていたから。



オレは彼女が控え室に入っていったのを見届けて、社さんに頼んでいたものを彼女の衣装担当に渡した。

「うわー、敦賀さん、これ・・・重い。本物じゃ、ないですか。あの子の為ですか?」
全てを分かっていたような彼女に苦笑した。
「最後のご褒美だよ。一緒に映画の主演やったの、最初で最後だから。」
「・・・・えっ?・・・最後?」
「あぁうん、まぁすぐ分かるから言っておくけど、明日、日本を発つんだ。しばらくアメリカへね。だから。」
「う・・・・そ・・・・でしょう?敦賀さん、いいんですか?あの子、置いていって。私分かっていましたよ、敦賀さんの本音・・・。リコと、映画撮影中「キョーコちゃんは本当に敦賀さんに愛されてる」って耳打ちしあっていましたから。」

彼女はオレの衣装係と彼女の衣装係を掛け持ちしてくれていた時期があったから、何となく、この映画が始まるよりも前から気付いていたのだという。

彼女いわく、「いつも一緒にいる衣装係とメイク係は騙せません」ということらしい。オレのメイク担当も彼女のメイク・衣装担当もLME所属で、確か仲良がよかった。彼女は「3人ともみんな気付いていましたよ」と付け加えた。そして、3人の間でずっと緘口令を敷いていますから大丈夫、というその気持ちに感謝した。

「でもそれ、作ったの、みんなにナイショね。レプリカのほうも、一生外に出さないで欲しいんだ。きっと、「王女様ごっこがしたいから欲しい」って言うと思うんだよね。あの子、そういうの・・・好きだからさ。でもね、いいんだ、それを作ったのもオレの気まぐれだから。ま、最後まで楽しもうかなと思ってね。」

「敦賀さん・・・優しすぎる。いいんですか?」
「あの子のペースでいいんだよ。あの子が今幸せなら、ね。」
「違いますよ。敦賀さんが居ない幸せ、あの子にあると思います?お互い思いあってるのにいいんですか?」
「?」
「あの子、絶対に自分の気持ちに気付いてる。それを一生懸命隠しているように見えますけど・・・ね、私からは・・・。」
「そう?そうかな。」
「そうですよ、男性の目は隠せても、同じ女性の目は隠せません。あの子、敦賀さんの前だけでは「女」の目、してた。一生懸命隠していたみたいですけどね。」
「・・・・・。」

「でも、敦賀さんがそう決めたのなら・・・今度は彼女次第でしょう?だから、成るように成ると・・・思っておいたほうが、気が楽ですよ。敦賀さんも、あまり思いつめないように・・・。また日本に帰ってきてくださいね。あ、社さんは「これ」の事知ってるんですよね?私、リコにもナオにも「これ」の事は言いませんから。じゃ、失礼します。」

そう言って、彼女は渡した箱を大事そうに抱えて頭を下げた。


オレは彼女が好きだといった黒いロングスーツに身を包んで、用意を進めていた。先ほどの彼女の言っていた「メイク係は騙せない」という言葉が頭に浮かんで鏡を見上げると、ふいに目が合った。

「どうしたの?敦賀君?」
「・・ちょっと考え事を・・・。そうだ、長い間今までお世話に・・・なりました。またいつか戻ってきたら・・・またお願いします。」

「敦賀君・・・やっぱり本当に行ってしまうのね。もしかしたら、あの子の事諦められなくて、行くのやめてこっちに残るかと思ったわ。あの子もあなたも不器用よね、ホント。お互い好きなのに。あぁ知ってたの、意外?敦賀君の顔ずっとメイクしてきたの私だもの。体調とか気分とかは・・・やっぱり分かるわ。リコちゃんなんて、もうキョーコちゃん愛しちゃってるから。キョーコちゃんの事、一番分かっているかもよ?社長が言ってたけどこれから彼女の専属になるようよ。」

「そう・・・ですか。彼女ならあの子には最適かもしれませんね。オレはもう・・・。」

あの子の側にはいられない。

彼女も分かったように何も言わなかった。
無言のままの支度が終わり、オレは彼女の控え室へ向かった。

「そこは否定しないでね。で、誰が・・・あなたを綺麗にしてくれたのかしらね?私、賭けてもいいわよ。・・・・そうよぅ、だって・・・・・。」

部屋の中からリコちゃんとあの子の会話が聞こえていて、オレは部屋の後ろに立ったままその様子を眺めていた。リコちゃんはオレがいる事にすぐ気付いたようで、すぐに口を噤んだ。

「さっ、できた。賭けの答えはまた今度ゆっくり聞かせてあげるから。後ろにあなたのリュークが・・・・待ってるわよ?」

彼女はとても綺麗になった。そう思った。
リコちゃんも、満足そうに頷いていたから、同じ気持ちだったのだろう・・・。

声を掛けて、彼女の手を取ったまま、第六スタジオまで歩いた。離す気はしなかった。
彼女がオレとの共演がとても楽しかったと珍しく本音を口にした。
思わずいつもの「キョーコちゃん」にするように、髪に手を伸ばしてしまう。
彼女はまるで「キョーコちゃん」のように照れて下を向いた。

第六スタジオに入るとすぐに花束を貰って、オレは乾杯の音頭と共に飲み始めた周りをよそに、少し離れて社さんと二人でしゃべっていた。このパーティがオレの送別会だと言う事は、社長が開いてくれた時点でうすうす気付いていたが、何となくその賑やかな中に身を置きたくなかった。特に貰ったグラスに口を付けなかった。社さんに頼んで、いつものミネラルウオーターを貰って、しばらく周りの様子をのんびりと眺めていた。

彼女は飲むのをためらっていた。不破は分かっているのだろうから止めたが、オレは止めなかった。多分、外で飲む分には、酔っ払い止まりだと踏んでいたから。

たださすがにオレの分まで飲もうとするので、それはまずいと思って飲ませなかったのがいけなかったのだろう。彼女は他の人の分をどんどん奪い始めた。彼女は5人程奪って飲んだ後、オレのところへ嬉しそうな笑顔で来た。

「えへへ、あたし、沢山のめるようになっちゃいました。」
「最上さん・・・。だからやめておきなさいって言ったのに。もう、だめだよ?」
「やーですよっ。だって、今日はもういっぱい楽しんでもいい日なんですもん。」
「そうだけど、足元、気をつけて・・・。大丈夫?あっ・・・」
彼女はふらり、とよろけて近くにいた不破にぶつかった。
それを支えた不破はあきれたように怒った。
「お前っ!!飲みすぎたんだろ!?だから・・・やめとけって言ったのに。」

彼女は不破の言葉を聞いてあからさまにいやな顔をした。
そしてオレの後ろに隠れた。
オレはまさか「キョーコちゃん」に変わったのかと思って横目でちらりと彼女を見下ろした。そして不破は見たことが無いほど目を見開いた。

「お前、何・・・してんだ?」
「ノア、やだ・・・。」

あぁ・・・・この言い方といい、後ろに隠れた時の表情といい。

「キョーコちゃん」だ・・・・・・・・・。

そう思った。

「オレはノアじゃねー!」
「じゃぁ、ショータっ・・・・」

と彼女は言いかけて、俺の後ろで不破に口を思い切りふさがれていた。
なぜそんなにその本名が気に入らないのだろうか?

やだ、と言ってオレからも不破からも離れた彼女は、今度はキス魔と化し、社長やらスタッフやらの頬へキスをし始めた。オレは一人「キョーコちゃん」から逃げるように、さらにスタジオ奥の薄暗い、どこか安心する雰囲気のする壁際に立ってその賑やかな様子を遠くから眺めていた。社さんは見たことの無い「キョーコちゃん」に呆然としていたようだった。

オレを「リューク」とよび、不破を「ノア」と言ったのだから、多分リアルタイムの「キョーコちゃん」なのだろう。

しばらくして、遠くでリュークを呼ぶ彼女の声が耳に入った。

正直な所・・・動揺した。

そして・・・・・昨日の決心を諦めて・・・・・・・最後の覚悟をした。

オレは聞こえないフリをしていたが、先に不破がブチ切れたようだった。
足元のおぼつかない彼女を連れて俺の前へ立った。

「お前が・・・・いいんだと。だけどなぁ、お前、もう行くんだろ?んなのズリーぞ。だから言ったんだ、オレは最初に!!」

不破は「傷付けるのはオレ」かもしれないと。
分かっている。

でも・・・。

「そうだね・・・。」
「そうだね、じゃねぇ。コイツ酔っ払ってるときは本心しかいわねぇんだ。」

不破は知っていた。昔は言われたのであろう、「ショーちゃんがいちばんすき」。
だから今日彼女に飲まそうとしなかった。
多分今の彼女の「答え」が目の前で出るかもしれないから。

「知ってる・・・。」
「んだとてめぇ・・・・。コイツに・・・・飲ませたのか。」
「飲んだんだよ、自分で。」

少しだけ、嘘、だけどね。

不破は心底オレが憎いという目で見上げた。

その目、もうちょっと撮影で出せれば何か賞にノミネートできるんじゃない?どうも不破は感情の高ぶりと表情がそのままリンクするな・・・とこの状況下にもかかわらず、オレは頭の片隅で意外と冷静に彼の観察を続けていた。

「ほんとに汚ねぇな・・・。こいつ、アンタに全て本音で話して言っただろう?それから何を聞いた?好きだといったんだろう?あんたのことだから酔ったコイツには覚えてないとでも思って・・・・突き放すためにアメリカ行きを伝えたんだろう?だから、オレはお前が傷つけると最初に忠告した。泣いただろう?叫んだだろう?もうお前が居なくなると分かって・・・。こいつはな、実際覚えてないがそれが現実の気持ちに反映する。最近のコイツ思いっきり影響されてたじゃないか。お前はいいかもしれないが・・・コイツの本心・・・・聞くだけ聞いて、お前はもういないじゃ、本人がアンタのアメリカ行きを知らないまま置いていかれて、いつか、酔ってねぇコイツが自分の本心に気付いたらどうする・・・・。今度はお前が復讐されに来るとでもたかをくくっているのか?!」

不破は周りに聞こえないようにするためなのか、一気にすごみつつ低音でまくし立てて、オレに詰め寄った。熱くなった彼をよそにオレの心はどんどん冷静になっていった。ただどうしても彼に伝えなければフェアじゃない言葉を返した。

「現実の気持ちが・・・飲んで反映したんだよ・・・。少し前からオレは知ってたよ。今の現実の彼女はまだ気付いてない・・・いや、気付きたくないんだよ。彼女・・・言いたい事を中々口にできない性格なんだ。君も知ってるだろ?たまたま飲むとそれが出てくるだけ。ごめんね?」

オレが先にTVで先制してしまったから、一生懸命気付づかないようにしてくれているんだって事は知ってる。でも、しょうがないんだ。少し時間とタイミングが遅かった。もうタイムリミット。もう少し早く、気付いて欲しかったな。

だから今日で不破に返す。・・・・・・・だから。

「不破、明日からはお前の好きにしろ。だけどね・・・今夜は・・・オレがもらう。」

そう伝えた。

全く聞こえていないであろう彼女は、不破の手を振り解こうとして、リュークと繰り返し呼んでいた。

「勝手な言い分だな。まぁ・・・コイツは本心しか言わねぇが・・・・本人が全く覚えてねぇんじゃ・・・な。ざまぁねぇな。全部コイツにとっちゃ夢の中だし・・・。・・・まぁ・・・もう・・・どうでもいい・・・ガキだけは作るなよ・・・オレはてめぇの子供の面倒なんて見るのごめんだからな・・・。」

不破は諦めたようにオレに彼女を押し付けて、彼を心配して近くにいたマネージャーの下へ戻った。

先生が目配せをくれて、社長ほか監督や社さんたちが談笑をするようにして今の状況を隠してくれていたのが分かった。不破と彼のマネージャーもそのままその輪に加わっていた。

彼女はオレに懸命にリュークと呼んで、抱きつき、「きすして」とすがって裾を引っ張った。

「最上さん、昨日お別れをしたはず・・・なんだけど・・・。」
「「最上さん」じゃないでしょ、「キョーコちゃん」だもん。れんも「敦賀蓮」はお仕事用なの。あたしの前ではいつものれんでなきゃいやっ。それに、お別れは今日・・・できるもんっ!まだ目の前にれん、いるもんっ。・・・だからっ・・・・おねがい・・・もうわがままいわない、今日で最後にするから・・・・れんはあたしのれんでいて・・・・。」

うっすらと涙を貯めて見上げた。彼女は屈んで聞いていたオレの首に腕を回して全体重をかけて引っ張り、そのまま引きずられるようにして、ずるずるその場にしゃがみこまされてしまった。

「本当に・・・・キョーコちゃんは・・・・。・・・君には負けた、いいよ、今日二人で最後のお別れ、しよう・・。」

オレは彼女を抱き寄せて、キスを繰り返した。彼女も嬉しそうにそれに応えた。
優しい吐息がかかってくすぐったかった。

耳元で、醒めたら覚えているはずも無い彼女に、卑怯な手だと分かっていたが口にした。

「キョーコちゃん、いつかオレを迎えにきてよ。待ってる。」
「ホント?まっててくれる?いく、ぜったいにいく。やくそくね?これ、あげるから。いつかあたしがれんを見つけたら返してね。」

そうオレの耳元で囁き返した彼女は、自分のティアラをはずしてオレの頭に載せた。オレもオレのつけていたクロスのペンダントを外して、彼女の首にかけた。

彼女は「やくそくね。」と言って、オレの額に自分のそれを合わせて優しく微笑んだ。

オレの頭から落ちそうになったティアラを彼女はわざわざ直そうとするので苦笑した。

「いいよ、もともと女の人用なんだから載らないって」というと、「だめっ。れん、これはやくそくのしるしなんだから」とふくれた彼女が可愛くて、からかってまた笑った。

「ね。れん、あたしね、今すごーくしあわせ。れん、だいすき。あたしね、ふだん、れんのこと思い出せないけど、あたしいつもれんのこと思ってる。だから、あめりか、いってもあたしのこと・・・れんもおもいだしてね?すぐにみつけにいくから。」

そういって彼女はオレの腕の中で目を閉じ、そのまま寝息を立て始めた。

しばらく彼女のその様子を眺めていて、オレは彼女と最後の別れをする決心をした。

彼女に俺の羽織っていたジャケットを顔の上から掛けて、抱きかかえた。
隠すようにしてくれていた集団に近づいて、告げた。

「社長・・・すみません、先に・・・彼女を連れて帰ります。」
「主役が二人ともいねーんじゃ、しらけるな。ま、これから、二人で最後の別れ・・・するんだろ?」
「・・・・・。」
「まさか彼女もだったとはな。・・・・蓮・・・・どうする?止めるか?」
「いえ。・・・・・・しばらく日本に戻るつもりもありません。だから、また明日。それと、酔うと・・・一切この子は覚えていないんです。だからオレがいなくなっても、この子には何も今の事は言わないでおいて下さい。あぁ不破、さっきも言ったが・・・あとは任せた。」

誰もが口を噤んで何も答えず、各々何か思うところがあるようだった。
オレはその様子を横目で見て流し、その場を後にした。
車の傍まで荷物を持って送ってくれた社さんが、一言、「どうするの」、と言った。

「・・・今夜彼女を抱いて、忘れます。じゃぁ・・・、明日朝、連絡しますから。」

オレは彼女を連れて部屋へ戻ると、酔って苦しそうなそのドレスを脱がし、そのままオレのベッドに横たえた。意識が戻らないようにオレの口に含んだ酒を何度も彼女に流し込み、オレは彼女を朝まで何度も抱いた。彼女はオレを素直に受け容れた。オレが彼女の身体を知っているとはいえ彼女は最初痛がって顔が歪んだが、夜も更けた頃にはその声と表情が幸せそうにオレを包み、本当に手放せなくなりそうになった。

最後彼女が意識を失う寸前、愛しているとお互い囁き合い、長い口付けをして・・・・オレは彼女と「さよなら」をした。


彼女の、無理をした笑顔から一筋流れた涙が、オレの心を縛った。


最初で最後の恋。


・・・・・・・もうこれ以上人を好きになることなどできないだろうと、思った。