【Cross 6】





 


彼女がすっかり黙ってしまったので、オレはそのままロックのグラスを見つめた。彼女を、自分の連れとして、ここにもう一度連れてくることは・・・生涯ないだろうと・・・苦い気分で、彼女をちらりと見た。
 
彼女はその好物を残し、琥珀色の液体をくるり、とグラスの中で回しては飲み、と続けている。彼女が好物を残したのは、やはり疲れているからだけではない事は明らかで、オレはまたイライラとした気持ちが占拠した。


「ねぇ・・・君は・・・こうして・・・男と遊んだり・・・・するの?」

びっくりと訴えた目が大きく見開かれて、オレを初めてしっかりと見た。

「・・・・・・」

少し酔ってきたのだろう、彼女は一瞬しっかりとオレの顔を見上げたものの、そのままオレの方へ身体がぐらついた。オレは彼女を抱きとめて、彼女の反応を待った。


「敦賀さん・・・知ってるじゃないですか・・・私は・・・あいつ以外の男なんて、今まで目に・・・入っていなかったんですよ?私はもう・・・そういうの・・・いいんです・・・。」

本人が自覚していないであろうその憂いを帯びた微笑に、オレはひどく抱きしめたい衝動にかられて、支えていた腕に力がこもった・・・が。それをすることはしなかった。

「なら、これからそれを知ればいい。なぜ・・・先を否定する?」


半ばすがるような目でオレを見た彼女は、目にうっすらと涙を浮かべていて、オレは困った。


「いいんです。」


そう、しぼり出すように、自分を肯定するように彼女は口を割った。


彼女のすべてを受け止める事も、またすべてを突き放す事もできない自分を呪いながら、その視線を避けるようにしてまたグラスに口をつけた。

酒が入ったときの彼女のオレを見る目が・・・無意識に・・・段々と変化が現れているのを、オレは見ないフリをしていた。


彼女が、シラフの時はその本音を絶対に見せない。


それがひどく悔しかった。