敵がいなけりゃ




多忙な彼女が今住んでいるところから引っ越す事になった。オレの部屋のすぐ近くに一部屋借りたという。どうせなら一緒に住もうと言ったのに、「甘えちゃうから」といってきかなかった。そこで一度喧嘩したりして・・・・。荷物もだいぶ片付いたといい、オレの車で少しずつ運び出す事にした。

だるまやの店の横に車を横付けして、ドアを開けると、店先でちょこん、と座っていた彼女がオレに気づいて、にっこりと笑った。


「敦賀さんっ。つき合わせちゃってごめんなさい、せっかくのおやすみなのにっ・・・・。」

またすまなそうな笑顔。遠慮なんて要らないのにね。
いつまでたっても気遣ってばかり。

「いつものお弁当の御礼にね。」

「そんなのはついでですから。あ、入り口に頭ぶつけないで下さいね。」

店の脇の勝手口から通してくれた。入るとすぐに店の夫婦と目があった。混み合った店内。こんにちは、と声をかける。頑固そうな父親はちらり、と目をくれて軽く会釈を返すと、すぐに手元の料理に目線を落とした。それをフォローするように、母親がオレに近寄り、「キョーコちゃんの荷物、それからキョーコちゃんをよろしくね。」と満面の笑みで小声で囁いてくれた。


「お店忙しい時間に・・・おじゃまします。」
「つるがさーんっ、こっちです。」



階段に既に段ボール箱が出してあった。箱には、洋服・台本・・・・・と赤いペンで書き入れられ、置く場所も右の部屋、左の部屋、と指定されている。



「これを運べばいいの?」
「あ、はいっ・・・・お願いしますね!!!」



彼女は部屋の奥からばたばたと音を立てながら廊下に顔を出し、荷物を置いた。しばらく何往復かして、最後の箱を車に動かし終えた後。



「ねぇ、キョーコちゃん、もう終わり?」
「あ、はいっ、もう終わったんですか?今日出来ている荷物はそれでおしまいですっ!」



額にじわり、と汗をかきながら彼女はまたにっこりと笑った。荷物を動かしたとはいえ、まだ大きな家具は残っている。それでも、段ボール箱の中身が大体どこに置かれていたか位は容易に想像がつく、綺麗に整頓された部屋。無駄な物は一切無いだろう。


一切無い・・・・・だろう・・・・・?????



「ねぇ・・・・あのさ、その壁の・・・・オレの恥ずかしいポスターと・・・・その横のやたらでかいポスター・・・・それは・・・・・。」


『必殺!ショータロー!!』と書かれた札つきの、やたらに大きいポスターの横に、オレの随分と昔の写真が・・・・・一枚。


「いーやーっ!!!!!!!」


真っ赤になった彼女は、急いでオレのほうのポスターの画鋲を抜いた。そして、その横のポスターも・・・・・。



「な・・・あ・・・・っ!!!!」


言葉を失った彼女の部屋の隅には、さらに小さな人形が・・・・・。


「それって・・・・オレ?」

・・・・・・・と彼。

「・・・・・・・・・・・・・!!!!」
「良く出来ているよね・・・・どっちも・・・・。ねぇ、それってどういう意味なのかな。」
「な、あ、あのっ!!!!」


不破のモノが飾ってあった事にオレが怒ると思ったのか、彼女は彼のほうだけを纏めてぐちゃぐちゃぐちゃ・・・と袋の中にごたまぜに詰め込んだ。


「怒ってないって。そのさ、オレのポスターの横に張ってあっただろう・・・・札にはなんて書かれていたわけ・・・・?」


オレのほうのポスターには、何かをはがした痕跡だけで、札はついていない。


「目指せ・・・・って・・・・・」
「ホントに・・・・?」
「はいっ・・・。」
「嘘ついてない?」
「・・・はいっ・・・・。」

その上目遣い・・・・何か違う事が書いてあったんだろうな・・・・。

「・・・・・・くすくす、怒ってないって。そんなに小さくならなくたって。」
「でも、あのっ・・・恥ずかしいですからっ・・・わ、忘れてくださいねっ?」
「でもさ・・・オレのポスターよりも不破のポスターの方が大きいっていうのが・・・・いただけないよね・・・・。」
「これはっ!!!!」
「これは?」
「・・・・・・・・こ、コレしかっ、無かったからっ・・・・。」
「へぇ・・・?」

また上目遣い・・・・。

それって出会ってすぐの頃かそれよりも前の写真だろう・・・・・?一体どんなつもりで貼ったんだか・・・・何が書いてあったんだか・・・・目に見えるような見えないような・・・・。


「じゃあなんでオレの札、剥がしたの?不破は目指して、もうオレは目指してくれないわけ?」
「な、あ、あのっ・・・・そうじゃなくてっ!!!!」



何かを隠したまま彼女は赤くなったり青くなったり。
結局、なぜオレの方ポスターの方が小さいのか、そのオレのポスターの横の札には何が貼られていたのか、そして、なぜ不破のモノは剥がさないのか・・・・は教えてくれなかった。


まあ誰にでも目指したい相手がいて――・・・・オレのライバルはある意味不破なのか・・・・・?――・・・・成長しようという気になるんだろうから・・・・オレのが貼ってあるのだから彼女の部屋の事は忘れてあげる事にしよう・・・・・。


だけどね、オレと不破の人形。あれは大きさが背の大きさが違うぐらいでほぼ同じじゃないか・・・・・・!!!!!もし彼女が毎晩オレと不破を交互に抱えて一緒に寝ていたらオレは切れるかな。どうかな?オレだけにして欲しいというのは、我侭なのか?そんな事を思う大人気ない自分に気づくのもまた、明らかな敵がいるから・・・・・なのか?


「あの、敦賀さんっ・・・・」
「なにかな。」
「・・・・・・この部屋に入った大将以外の男の人は、敦賀さんだけですからっ・・・。」
「・・・・・わかってる・・・・。君はそんなに嘘が突き通せるほど器用じゃない。さて、そのポスターと人形・・・今度の部屋のベッドサイドにはどっちを飾るのかな。」
「答え・・・・・・・聞きたいですか?」
「いや?別に聞きたくないね・・・。」
「そうですか。じゃあ・・・・・ショータロー飾ってもいいんですね?」
「どうぞ?」
「・・・・・・・・敦賀さんも嘘を突き通せないですよね・・・・くすくす・・・・。」




さて。オレの一番の敵は・・・誰なのかな。





2006.08.02


さっき気づいてすごい突っ込みたくて、完成最短時間記録達成(苦笑)。どこかで話題になっていたらゴメンなさいですが・・・・^^;。

ACT.83、この間盛り上がったんですよ・・・・蓮のポスター未だに小さいよねって(笑)。
恨みの大きさだとしても、毎晩傍に飾られているのに納得いかん〜ってね(笑)。
で、大きさを比べてみようとACT.15を読み返して、今更気づいたんです。
蓮の方の札が無くなっている・・・・それってどういうことなんですか!!きょこちゃんって(^^;緒方監督に「打倒」のあと「目指せ」と言い直しましたが、部屋は「打倒」がなくなってる〜〜!って気づいて一人で盛り上がりました・・・。
すんません・・・大人気ない蓮を書きましたが大人気ないのは私だわ(笑)。