注)アリーは当HPのオリ猫です。











その手で触れてごらん




私の横で白猫が丸くなっている。

私と白猫は、一緒にテレビで蓮の姿を目で追っている。蓮がテレビの中から声を発するたび、ひくひく、と耳を動かして、聞き慣れた声に反応する。その姿が可愛くて、思わず声をかけた。

「蓮よ?アリー。分かる?」
「ナァウ。」

アリーは分かっているのか、蓮の声がするほうを必死で探している。映像に写る蓮は平面で、蓮だとは認識しにくいらしい。


『リュー……』
『ナァ。』


蓮がそのドラマで飼っているという猫の名前を呼んで、猫が蓮の腕に納まった。

「ナァァ〜〜〜〜〜。」
「アリー?」

アリーはテレビに向かって、思い切り喉を鳴らしている。蓮の声がするのに他の猫を蓮が可愛がっているのが気に入らないのかしら。でも、それは私にしてみたら、他の女の子を可愛がっている蓮を見させられているのと同じなのだろう。

「落ち着いて。アレは違うの。蓮がアリー以外飼うはずないでしょう?」

背中を撫でて落ち着かせて、頬ずりをする。

「ナァ。」

アリーは腕の中で落ち着いて、また蓮の声に耳をひくひく・・・と震わせる。

「誰を、どの猫を想像してこのドラマをやっていたか教えてあげようか?」
「ひあッ・・・・!!・・・・お、お帰りなさい。」
「背中がね、アリーもキョーコちゃんも同じように丸くなって見ているからおかしくて。」
「傍にいたの?」
「うん。気付かないなって思いながらね。アリーおいで。」


蓮が猫を触る時のその顔は、本当に優しくて甘い。思わず猫に嫉妬する程には、名前を呼ぶのに優しい声を出す。

「アリー…」

すりすり…とアリーが蓮の頬に、頭をこすり付ける。アリーも誰が自分を可愛がってくれているのか分かっていて、蓮が名前を呼ぶとすぐにその腕の中で可愛い反応をして、平面でない蓮に「遊んで」とばかりに蓮の顔を舐めまわす。

「ナ〜…。」


そんな白猫の姿に、ふっ・・・・と目を細めて笑う蓮の顔が好きで、アリーが蓮に擦り寄る姿が好きで、私はそれを傍で見ているのが好き・・・。蓮は自分がどんな顔をして白猫をあやしているのか気付いていない・・・・。少しは自覚をして欲しいけれど。その甘ったるい瞳を猫以外に向けて欲しくないというのは、我がままかしら?


「ねぇ・・・蓮。」
「ん?」
「何で・・・アリーを選んだの?」
「・・・・目が合ったからだよ。」
「目が?合う?」
「だろう?アリー・・・?」
「ナァウ。」
「ほら。ね?」
「ふふ・・・・そうね。」
「ちなみに君を選んだのは飽きないから。」
「・・・・・・・・えぇ、そうでしょうとも。」
「くすくす・・・・。」

アリーの背中を撫でる大きな手は、限りなく優しい。
アリーもごろごろ…と喉を鳴らす。


「そろそろ、君も構おうか?」
「いいえ?」
「そう?」
「アリー、君はもうおやすみ。」
「ナァウ?」

アリーは急に下ろされ、ふんふんふん・・・・と薄いピンク色の鼻をひくつかせて、蓮に「もっと遊んで」と目で訴えている。

「アリーおいで。私が遊んだげる。」
「ナァウ。」

ぱたぱた、と綺麗な尻尾を振って歩いてきて、差し出した腕にくるりと納まるアリーは可愛い。蓮が擦り寄る気持ちは十分分かる。頬をすり寄せると、今度は私の顔を舐め始める。

「ふふ、くすぐったい。」
「キョーコちゃん…アリーを抱く時は本当に可愛い顔をするよね。」
「?」
「自覚してないんだろ?どうせ。オレが抱いてもそこまでの顔するかな?」

その言葉そのまま貴方にお返しします、と言いたい。

「だってアリーは可愛いもの。ね?アリー?」
「ナウ。」
「ほら。ね?」
「くすくす・・・。確かに可愛いけどね。」
「なんで猫なんて飼おうと思ったの?」
「そこに居てくれたら…オレは否応無しにココに帰ってくるだろ?一匹だと静かだけど今は二匹になってにぎやかだよね。」
「・・・・・・む。」
「くすくす・・・。」

蓮の腕のが伸びて私を抱え、アリーと一緒に収まった。

「猫はね、可愛がってくれる人を分かってるわ。」
「そうだね・・・・・。」

そして蓮は私に頬ずりをして、名前を呼ぶ。

「キョーコちゃん・・・。」
「にゃあ。」
「・・・・違うだろう・・・・。」
「どうせ誰にも懐かない手のかかる猫だものっ・・・。」
「ふ・・・他の男に懐かれても困るけどね。だろ?アリー。」
「ナァウ。」
「アリーも同感だってさ。」
「アリーはいい仔だからどんなお客さんにも懐くわ。」
「・・・・君は悪い子でいい。」


言葉とは裏腹の、優しい、唇。優しい、手。
蓮が優しく触れる場所から蓮の心が伝わる。


猫は、誰が可愛がってくれるのかを知っている。蓮は私が我侭になってもおかしくない位に、猫かわいがりをしてくれる。ずっとその大きくて優しい腕の中で丸くなって眠りたい。

「どうしてそんなに私を好きでいてくれるの?・・・って聞いていい?嫌な質問?」
「君も真っ白で可愛い猫が目の前にいたら…手を出さずにはいられないだろ?」
「・・・・・・・。」
「それとおんなじだよ。」
「じゃあもう世界に白い猫なんて他に要らない・・・・・・・・・。」
「・・・・・・大丈夫だよ・・・世界に二匹といないから・・・・。」

私の唇を探り出す蓮の唇も、頬に添えられた手も、何もかもが愛おしい。
愛しいものが目の前にあったら、触れたい。
だから蓮の髪に指を差し入れて、髪を撫でながらキスをする。
その優しい柔らかさを、共有する。


互いに触れた指先から、愛しさが零れる。
抱きしめた身体から、温かさが零れる。
口付けた口唇から、愛が流れ込む。



「ね・・・?傍にあったら触れずにはいられない、だろう?」


返事はしないで、私の手に触れた蓮の指に自分のそれを強く絡めた。
柔らかくて愛しくて目に見えないモノがその手の中に収まっている。
それに触れていたい。

すりすりすり、と白猫のように蓮の頬に頬ずりをする。
蓮の温かい手が、私の手を、そっと包んでくれた。
アリーを呼ぶときと同じ、甘ったるくて優しい瞳がすぐそこにある。
その瞳に吸い込まれるように抱きしめて、頬をまた互いに擦り寄せた。



「ねえ蓮?ずっと触れてて、いい・・・・?」






2007.1.23