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「キョーコちゃん、お待たせ・・・。」


蓮は車から降りると、木の幹に寄りかかり、立っているキョーコの傍に寄る。撮影後、珍しくキョーコに「待ち合わせたい」と言われた場所をようやく発見した。ある街の外れ。妙に林の奥深く。このあと二人で、この奥にある川辺にでも行きたいのだろうか?と推測しつつ、キョーコの髪を撫でた。明るい夕日がキョーコの髪を赤く染めている。

「蓮・・・・」

じ・・・・・とキョーコは蓮を見上げる。何か思いつめたようなその視線。目が合うとふっとそらし、下を向いた。

「どうした?待った?」
「違うの。」

キョーコは蓮の手を握り返す。

「何か、重要な、話、かな・・・?」


キョーコの妙に張り詰めた緊張感が、握った手から蓮に伝わる。蓮は、キョーコの中指をさすり続けたしばらく後、「誰もいないから抱き締めてもいいのかな。それとも、それはされたくない?」と言って、一度握った手を離した。


手を離されてすぐに、キョーコが追う様にして蓮の中指を握る。それが合図かのように、蓮はキョーコの肩を抱き、久々に会う二人は、互いを抱き締めた。


「どうした?こんな所で待ち合わせるなんて。」
「あの・・・・・ね?」
「なに?」
「ここでキスを、してほしいの。」
「い、いいけど・・・。」


事あるごとに外で口説きながらキスをしようとする蓮に、照れて、恥ずかしいから絶対に外でなんてしない!!と公言していたキョーコが出会い頭何の前置きも無く自らキスをしてくれ、と言う。そう言われると蓮も何となくの不安が心をよぎる。


「いいけど・・・いいの?ここは外だよ?」
「や、やっぱりっ・・・あのっ・・・・わ、私・・・・がそんな事を言うなんておかしいですよねっ・・・・・ガラじゃないのは分かっていたんですけどっ・・・や、やっぱり今のはナシで!!!さ、さぁ帰りましょう。」
「帰るの?こんな所に呼び出しておいて?」
「はい、さっさと帰りましょうっ!!!!」


普段言わないような事を初めて言ってしまったキョーコは、照れと恥ずかしさで頬を真っ赤に染め、俯きながら足早に蓮の横をすりぬけようとして、腕を強く引かれて引き止められた。強引に元居た位置に引き戻される。キョーコの身体が木の幹にぶつかり軽く跳ねた。


「ホラ、本当の事を言わないと、怒るよ?」
「・・・・・・・・・。」
「誰かに何かされたの?それとも今までした事が無い・・・外でしてくれなんて・・・オレが浮気でもしていると疑ってる?そこら辺に週刊誌のカメラマンでもいるのかな・・・。」
「ち、違いますっ・・・あの・・・・あの・・・。」

キョーコはやや怒り気味の蓮に落ち着いて欲しくて、ぎゅう、と蓮の身体を抱き締める。小さな声で、蓮が好き、と付け加えた後に、

「この間のロケで・・・・この木の下で・・・キ・・・キスしたカップルは・・・・永遠に結ばれるって・・・・いう、その・・・・言い伝えというか・・・・・ジンクスが・・・あると聞いて・・・・してみたかったんです・・・。ジンクスでも、藁でもなんでもいいから・・・すがれるものにすがってみようかなって・・・。」


と、顔を上げられず、蓮の身体に向かってそう言った。


「・・・・(まったくもう・・・)・・・。」


キョーコに、照れ隠しなのかさらに身体を、ぎゅう、と強く抱き締められた蓮は、もうどうしようもない感情にとらわれて、上を向いた。


「ん・・・?なるほどねぇ・・・。」
「・・・・・?」
「この木、ヤドリギだよ・・・・。」
「ヤドリギ?」
「クリスマスの木。この木の下でキスしたら永遠に幸せになれるんだとも言うね・・・。欧米だとクリスマスにこの木の下にいる女の子にはキスしてもいいんだ。」
「ダメですっ、そんなの!!!」
「くすくす・・・『してもいい』んだから、『しなくてもいい』んだよ。女の子の誘い文句の一つなんだから・・・。」

蓮がキョーコの目を覗きながら髪にそっと手を添えると、キョーコはゆっくりと目を閉じた。しばらくして息がかかるのを感じて、身体を震わせる。ちぅ、と唇を吸われた。

が、その後続くであろう唇の感触が無くて、キョーコが薄く目を開けて、蓮の目を追った。キョーコの瞳は、正直に、ねだっている。もう終わり?と。そんな瞳を間近で覗きながら、蓮は楽しげに初めてキョーコに誘われて外でするキスを楽しんでいた。


「いいだろ?たまには外でするのも。」
「もぅっ・・・!」


一度やんわりと蓮の唇がキョーコのそれを包むと、キョーコは蓮の首に腕を回した。蓮は右腕を木の幹に置き、もう片方の左腕でキョーコの腰を支えている。互いの唇を探りあう。何とも切ない感覚が身体を通り抜けて、やはりキョーコが先に脱力した。


「可愛い・・・。まだ、する?まだしたい?」
「・・・・・もうちょっとだけ、ここにいたいです・・・・。」


蓮がキョーコの身体を抱き締めて、一言言った。

「クリスマスにヤドリギの下でのキスを拒むとね、いき遅れるとか・・・来年は結婚できないっていうジンクスもあるんだよね。」


嬉しそうにキラキラ似非笑顔を浮かべた蓮は、余裕綽々で、対するキョーコは後ろは木の幹、逃げ場も無い。蓮は再びキョーコの唇を味わうことに決めた。散々蓮はキョーコにキスした挙句の果てに、キョーコがつぶやいた。



「も、もう満足ですっ・・・十分幸せです・・・一生分の外でのキスをしましたからっ・・・。」
「そう?もっとしようよ・・・まだ満足されたら困るんだけどな・・・ヤドリギなんてそうそう見つかるものじゃないからね。」


――ちぅ・・・・xxxx


「じゃ、じゃあ・・・蓮のおうちに・・・ヤドリギの実が付いたクリスマスリースでも飾りましょう・・・?(それなら屋内だし・・・)」
「その下に立つお嬢さんにはキスしていいんだよね?拒んだら・・・分かっているよね?じゃあ・・・ベッドの頭上にでも括りつけようか・・・。」
「く、クリスマスの話なんでしょう〜〜〜〜????」
「いや?元々はお守りだよ。まぁオレにとっては君に遠慮なくキスできるなら何だっていいんだけどね。良かったよ、こんなひと気の無い場所に呼び出すなんて・・・別れ話かと思ったから。」

蓮がそう言うと、キョーコから蓮にもう一度キスをする。

「お、女の子が・・・男の人を誘う木、ですから・・・。」
「くすくす・・・可愛いよねぇ・・・キスするのにいい訳なんてしなくていいのに・・・。」
「・・・!!!」





――延々ばかっぷる・・・・





おしまい☆







2007.08.26



パラレルお決まり設定を普通蓮キョでやってみました・・・。
どうでしょうね。短いですけど・・・。
(きっとこのあと帰ったあとの蓮様の帝王具合が素晴らしいのだろうと無駄に妄想して終わります。ほほ・・・。)