あの視線は覚えがある。


私を“女”として見ている視線。
それは“嫌悪”しか思い起こさせない、、、そんな視線。



You pray, I stay




「私、あの人苦手・・・」


同じテレビ局で仕事が入っていたキョーコと奏江は、局内の喫茶店で待ち合わせをしていた。先に着いていたキョーコに、顔見知りらしい男が話しかけていた。

奏江の顔を見るなり、キョーコは一瞬だけ助かったといった笑顔を向け,その男は残念そうな顔をして去って行った。キョーコは特に嫌がる素振りを見せる事無く、丁寧にその男に対して挨拶をしていた。

「あ〜」 俯いてテーブルの上に置かれている水の入ったコップを見詰めているキョーコの言葉に、奏江は生返事だけを返した。

(あの人は、アンタに“好意”を持ってそうだったけどね)

それは伝わって来ても、嫌がる程の露骨なアプローチの仕方だったとも思えない。

「礼儀正しそうな人に見えたけど?」


キョーコも軽く頷いた。


「ドラマのA.D.さんなの。親切な人だけど・・・」


濁された語尾はキョーコの戸惑いを表している。「だけど、嫌」と続くであろうその理由に、キョーコは気が付きたくないのかもしれない。

不破尚のP.V.のセイで、キョーコに対する注目度は上がった。キュララのCMの平凡な女の子と、P.V.の天使が同一人物であるのが信じられないという目で見られるのはいい。慣れた反応だ。 P.V.の天使とキョーコが同一人物だと知ってガッカリされるのも、多少はムカついたとしても、そんなには気にならない。

「色気が無い」「芸能人っぽくない」、そんな言葉に怒りが込み上げている方が、まだ救いがある様な気がしてくる。 キョーコが一番戸惑っているのは、“好意的”な評価を受ける事。 仕事が認められる事は嬉しいが、どう受け止めて良いのか戸惑う。褒められるという経験が少なかったからかもしれない。。。


それより何より、以前には無かった(気が付かなかった)男性から向けられる、自分を“女”として見ている目。 明らかに値踏みする様な視線でなくても、“女”としての興味を含む視線に、、、、キョーコは怯えていた。 どんなに紳士的な態度で接されても、何処かでキョーコのバリアー(怨キョ)が作動している。 背筋がゾクリとざわめいて、思い出したくもない男の顔が思い浮かんでしまう。 イヤな事を振り切る様に、キョーコは頭を二三度振って、いつもの笑顔を奏江に向けた。


「あれー、そこにいるのはウチ(LME)のお嬢さん達じゃない?」


聞き慣れた声が二人の耳に届いた。

「「今日は、社さん」」


「一緒してもいい?」と言うように首を傾げた社の為に、丸いテーブルに対面で座っていたキョーコと奏江は椅子を動かして社のスペースを作った。社は隣のテーブルの空いている椅子を持ち寄って、二人の作ってくれたスペースに納まった。


「あれ、何か深刻な話でもしていたの?」


少し元気の無いキョーコに気付いて心配そうに質問した。


「イエイエ,このコの男嫌いに拍車がかかったという話をしていただけです」


とんでもない台詞をさらっと言って退けた奏江に、キョーコと社はぎょっとした顔を向けた。

「も、モー子さん、そんなんじゃないよぅ」/「えーーーと、俺も一応男なんだけど・・・」


マトモに反応を返して来た二人が滑稽で、奏江は思わず吹き出してしまう。冗談か、、、と、ほっとする社に、 「このコは、言い寄って来る“男”が嫌みたいですよ」 と、爆弾を落とす。


予想していなかった言葉に社は目を剥くが、少し考える様な表情をした後、一人で納得した様に頷いた。


「ドラマのスタッフの間でも、キョーコちゃん評判よかったもんね(蓮と親しくしている所を遠目に羨んでいる男もいたからね)。真面目だし、礼儀正しいしね」

「それは仕事に対する評判であって、私がモテていると言う事とは違います!」

モテるワケ無いじゃないですか、、、と何故だか自慢げに断言している。 心当たりがあるのか無いのか、、、キョーコの口調は必要以上に強かった。


「大体、撮影現場は仕事場ですよ!そんな所に色恋を持ち込む何て不謹慎です!!」


キョーコの恐ろしい程の剣幕に、社はそれ以上の発言は控える事にした。キョーコが“幼馴染の不破尚”から受けた心の傷は、社が思っている以上に深いものなのかもしれない。蓮がキョーコへの気持ちを表に出していない以上、キョーコが他の男を近づける気がない事は、望ましい事であるように思われた。



◇◇◇  ◇◇◇  ◇◇◇  ◇◇◇  ◇◇◇


「打ち上げなんて初めてですvv」

蓮の車の後ろの席で、ワンピースを来て座っているキョーコの声は弾んでいる。

「いくら打ち上げだからって、羽目を外しすぎたらいけないよ」

蓮の保護者的な言葉は、キョーコの“男”センサーを振るわせない。蓮の心配は飽くまで“先輩”のモノであり、“女”としてのキョーコを心配しているのではないと、キョーコは安心する。その安心感が蓮への信頼としてキョーコの表情を優しくさせる。


先日のキョーコと奏江との会話を社から聞いていた蓮は、キョーコを不特定多数の男から遠ざけたいと思いつつも、自分の気持ちを前に出す事は出来ないでいる。蓮の言葉を素直に受け止めて、信頼を込めたまなざしを向けられる事に大きく安堵して、蓮の表情も緩む。



(男というカテゴリーの中で、俺の名前を一番先に思い浮かべてくれている間は、側にいる事を許して欲しい。俺はいつでもここにいるから・・・・。)


そう蓮は心の奥底でそっと祈り、キョーコを確認するように視線を上げた。


バックミラー越しに目を合わせたキョーコと蓮は、目と目で微笑みあっていた。二人の様子を助手席から見守っている社は、恐らく忘れ去られているであろう自分が「空気になれればいいのに。。。。」と切に願っていた。





2006/07/14 written by Karasui



2006.8.1



Special Thanks to 加羅穂さまv


宿題交換第一弾を頂きましたv実を言うとコレはとあるフレーズを埋め込むのを頼まれて、繋ぐ為に一箇所だけ私が手を入れております(^^;。ぷち合作。分かるかしら?流石に私風にしては申し訳ないとほんの一部ですけれど、光栄ですvvv


加羅様らしくほのぼので優しい感じですよねvほのぼのを最近書いてこなかった私は非常に感激したのでしたっ^^。ラストに・・・・やっぱり社さん気配りしすぎで哀れ・・・(^^;。「オレの為にくっついてくれ〜」なため息と心の声が聞こえてきそうです(笑)。(←読者の心代表かしら?(笑))タイトルの曲は二人で話していて「蓮の独白みたいだよね」なんてとこから。私が大好きな曲のひとつです(基本的にすごいヘビーか切ない曲が好きなの(笑))。相手から去る事もできず、かといって一歩を踏み出すと壊れてしまいそうな不安定さとを歌った歌です。そんな祈りにも似た切ない蓮の恋はいつ成就するんでしょうか(笑)。


頂いた日付に随分とタイムラグがあります・・・!m(_ _)m
宿題交換してくださいまして本当にありがとうございましたvvv
またぜひ私にも宿題下さいv