俺の前に表れる度に、違う髪型をしているアイツ。

全て知っている筈だったのに、俺の知らなかった瞳で俺を睨み返して来るアイツ。

そして、時々浮かべる表情は俺のよく知っている笑顔だったりして…

アイツの表情に気をとられてしまう自分に気が付かされる。




I KNOW





「最上さん?」


緊迫した沈黙を、第三者の声が破る。


「敦賀さん!」


蓮の姿を認めた途端、助けを求める様な、縋る様な表情をキョーコは浮かべた。


尚が触れる事が出来る程近くにいたと言うのに。


蓮は、キョーコが一人でいなかった事と、直ぐ側に不破尚の存在があった事に驚くが、表には出さないでいた。


キョーコの蓮に対する表情を見て、蓮は尚とキョーコの間にやましい事は無かったのだと判断出来る。


不安そうな様子のキョーコを安心させるかの様な柔らかい笑みを浮かべて、キョーコが蓮の傍まで走り寄るのを待っていた。



「どうしたの?」



キョーコに視線を合わせる為に、蓮はやや前屈みになる。


真後ろから見ていると、まるでドラマのキスシーンの様に思えて尚は苛立つ。



「撮影、始まるんですか?直ぐいきます」



キョーコは背後に感じる緊張感を振り払う様な明るい声を出そうと試みているようだった。


キョーコがこの状況から解放されたがっている事を察した蓮は、何も言わないままキョーコを庇う様に背中に腕を廻した。尚や、もう一人の存在を威嚇する鋭い視線を残して、二人は去っていった。



キョーコに脅威を与えていたのは、今回は自分ではなかったのにーーー。




尚は、キョーコが恐れた相手とその場に残されたまま二人の背中を睨みつける。



突き放したのは自分だった事は分っている。
それでも自分を追いかけて来るのが“キョーコ”だということも分っていた。



「お前は、俺だけを見ていればいーんだよ!」


キョーコの背中に向かって呟くが、キョーコの意識の中に自分が今存在していない事を感じて尚の背筋に冷たいものが走る。


「復讐相手は俺だろ?」


尚は自分に言い聞かせる様に呟いた。
独り言のつもりの尚の台詞を、傍らに立つ男は静かに聞いていた。


キョーコの視線の先に自分以外の存在がある事に、苛立ちを覚えるなんて状況が有り得るとは尚は知らなかった。


キョーコにとっての世界の中心は自分だけだと言う自信は、常にあった。


愛情であれ、憧れであれ、、、それが憎しみに変わっても、自分以上の存在がキョーコにある筈が無い。





“当たり前”の事が覆る事とは、この事にこそ言えるのだ。




尚にとっては、芸能界に必要とされないかもしれないと思った時以上の衝撃だった。













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2006/04/25 written by Karasui


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2006.4.25

Special Thanks to 加羅穂さまv

加羅様からサプライズがやってきました。
加羅様お忙しい中本当にありがとうございますvvv

尚視点、非常に切ないです。キョーコちゃんが尚にすっと背を向けて蓮に駆け寄るっていうだけで涙が出ます(;-;)。尚が足元をしっかり振り返るようになった時・・・でしょうか。当然の報いとはいえ自分がした逆で、男として相手にされない寂しさが分かるようになったら…っていう状況。大人になれるよ、尚って…少し応援しちゃいます(笑)。

さて、今回の蓮とキョーコちゃんの関係は?ととても気になりますが、蓮が屈んで優しくきょこたんの表情伺うっていうそのシチュエーションだけでも、すごいらぶv(笑)。可愛がられてるですよっ!!うーん至福・・・・v私何気ない蓮の仕草がすごくすきで・・・げふげふ。

えー・・・さて・・・さらに蛇足ですが・・・。最後の一文を読んで、藍の脳裏には「なんでもないようなことが幸せだったと思う」って…懐かしい曲が浮かびました(^^;。
でもでも。加羅様がイメージしされたと仰る曲はいつもの某アーティストさんからですが、完全に尚の歌だなって思いながら聞いていたので、めちゃめちゃ嬉しいですvv知っている方の為にご参考までに「僕の罪」イメージだそうですvvほんとうにありがとうございますvvらぶ。