バラの融点29

 

 

おまけ 




ある日の夕方、キョーコは工藤仁の部屋に居た。もう殆んど用事は無かったけれども、その後の話を聞きたいと言われて、久しぶりに遊びに来ていた。


「なるほど、じゃあオレの作品は結果的に作って良かったって訳だね」


工藤仁は嬉しそうにそう言った。


「先生、内緒ですよ?」
「大丈夫だって。ね?本当の事を言ってみるべきだっただろう?」


工藤仁は笑って目の前の自分の本を手に取った。


「君に愛が欠如しているって訳じゃ無い事は分かっていたけど、よかったね」


えへへ、と笑って、キョーコは少し恥ずかしそうに、笑った。


「今、実はすごく幸せだろう?幸せオーラが出てる。愛されてるね」
「・・・はい・・・」
「愛されたいと願うことって、結局は、自分が一人で弱いものだと強く自覚しなければならないから、強くなれなければ、人に愛されたいと願えなかったりしてね。弱い自分を受け入れられた人を見ると、少しだけ、ほっとする」
「・・・なんだかすごく弱くて、甘えすぎてる気もしますけど」
「男は頼られたい生き物なんだからいいんじゃないの?もっと彼を利用しても。利用されてるなんてきっと微塵も思わずに、大事にしてくれると思うよ」
「ふふ・・・」



キョーコは笑いながら目の前のいつもと変わらない紅茶を口にして、美味しいですね、と言った。


「先生、またお仕事があれば呼んでくださいね」
「そうだね・・・できればお願いしたい所だけど、気持ちだけ貰っておくよ。事務所ででもまた話をしよう。きっと今、彼はオレと二人きりの君にやきもきしてるはずだから、もう男と二人きりで会うとか、深く恋愛の相談をするとか、ましてやこうして男の家に一人で来るとかは、タブーかもしれないね」 



工藤仁は口に紅茶を含んで、穏やかに笑った。



【FIN】






2010.08.15

また今回も長い間読んで下さって、また、長いものを読んで下さってどうもありがとうございました!本編ラブの足しになったなら何よりです。

本の方のあとがきにも少し書いたのですが、カタマリさん・・・自分の中では誰だったのか、一体どんな意味があったのか最初から決まっていましたが、作者都合にてあえて書きませんでした。できればご想像におまかせしたいのですがもし書いたほうがよさそうなら、またネット用番外編でも書きたいと思います。

さて、次の連載や短編もどうぞよろしくおねがいします。
今度はモウソウではなく、ベビーを新たに産んでくるのでしばらくまたご無沙汰ぎみになるかと思いますが・・・またぜひ何かの折に思い出して遊びに来て読んで頂ければ嬉しいなと思います。